ハラスメントとその影響
ご利用者・ご家族からのハラスメント
ハラスメントとは、相手を不快にさせる言動などのことであり、介護現場で起こり得る以下のような行為は、ご利用者・ご家族などからのハラスメントと考えられます。
カスタマーハラスメント(身体的暴力)
・物を投げつけられる
・唾を吐きかけられる
・殴られる、蹴られる
・髪を引っ張られる
・胸ぐらをつかまれる など
カスタマーハラスメント(精神的暴力)
・大声で怒鳴られる
・暴言を浴びせられる
・長時間に渡り、執拗に叱責される
・サービス範囲外の提供を強要される など
セクシュアルハラスメント
・必要もなく体を触られる
・抱きしめられる
・入浴介助中、あからさまに性的な話をされる
・性的な画像を見せられる など
ご利用者・ご家族などからの不当なクレームや迷惑行為は、「カスタマーハラスメント」(以下、カスハラ)と呼ばれます。
クレームや要求のすべてがカスハラに当たるわけではなく、
(1)その内容に妥当性があるか
(2)その内容を訴える手段(言動など)が社会通念に照らして相当な範囲であるか
によって判断されます。
【厚生労働省による「カスタマーハラスメント」の定義】
顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの
ハラスメント対策の必要性
ハラスメントは、対応する職員の意欲・パフォーマンスや心身状態を悪化させ、これを放置すると、離職にまでつながりかねません。
また、事業所としても企業イメージの低下や離職増加による人員不足、利益の低下を招くだけでなく、サービスの質の低下などからご利用者・ご家族の不満が高まり、新たなハラスメントを引き起こす恐れもあります。
職員を守り、ご利用者へ質の良いサービスを提供し、事業所を安定的に運営し続けていくためにも、法人としてのハラスメントへの対策は必須です。
ハラスメントに関する法体制の動向
すべての介護事業者にハラスメント防止対策が義務化
近年、介護現場ではご利用者・ご家族からのハラスメントが深刻化しています。
厚生労働省の調査では、介護職員の半数近くが「これまでにご利用者やご家族などからハラスメントを受けたことがある」と回答しています。
こうした実態を受けて2021年度介護報酬改定では、すべての介護事業者に対し、ハラスメント防止のための必要な措置を講じることが義務付けられました。
カスハラについても、方針の明確化などにより防止の取り組みを強化することが推奨されています。
国としてもハラスメント対策を強化する方針
2024年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太方針2024)」では、職場におけるカスハラについて「法的措置も視野に入れ、対策を強化する」としています。
また、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」においても、労働者のメンタルヘルスの不調の原因となる職場内のさまざまなハラスメントへの対策を重視し、業種別の対策の取り組み支援を行うことが明記されました。
【情報提供元】
月刊デイ
【ハラスメントなどのトラブル対応について学ぶ】