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居宅到着直後の転倒事故

2024.10.27

居宅に到着直後、家族に「玄関まででいいですよ」と言われ任せたら、利用者がふらつき転倒

利用者Xさん(男性93歳、要介護4)は、左半身麻痺があり、移動には車イスを利用しています。

Xさんの居宅の玄関から門扉までは10mほどの砂利道になっており車イスでの移動ができないため、送迎時はドライバーがXさんを支えながらゆっくり慎重に歩行を介助しています。

ある日、デイサービス終了後に居宅までお送りしたときのことです。

ドライバーはいつものように、門扉のところでXさんに立ってもらい、右側から腕を支えながらゆっくりと玄関まで歩きました。

玄関で奥様(88歳)が「ここでいいですよ」とXさんに手を差し伸べたため、ドライバーは「では、お願いします」と言って支えていた手を離しました。

ところが、その直後にXさんがふらつき、奥様と一緒に転倒してしまいました。

受診の結果、Xさんは大腿骨頸部骨折と診断されました。

主任のミチコさんは「奥様が“ ここでいいですよ” と言われたのでお任せしました。送迎範囲は玄関までなので、デイサービスに過失はありません」と説明しました。

しかし、近所に住んでいる息子さんから「88歳の母に父の介助を任せるなんてどうかしている」とクレームが入りました。


デイサービスの送迎範囲は玄関までではない

本事例のように玄関などで転倒事故が起こると、「契約上、デイサービスの送迎範囲は玄関までである」と、“ 場所” で取り決められているように説明するデイサービスがありますが、これは間違いです。

タクシーのような運送業であれば、“ 目的地まで運ぶ(人を輸送する)” という契約内容と解釈できますが、デイサービスは介護事業です。


デイサービスの送迎範囲とは?

「居宅に帰着し、安全な状態と認められるまで」がデイサービスの送迎範囲です。

単に利用者を居宅へ送るだけではなく、車両の乗降や屋外での歩行を介助して移動させることも含まれます。

本事例の場合、利用者は職員に支えられ無理をしている状態のため、帰着して安全な状態になったとは認められません。

居宅内で座位の状態になって初めて業務が完了したとみなされます。

ほかの事例でも、「いつもは家にいる家族がいなかったので、利用者を一人で家に置いてきたらクレームになった」など、送迎時のトラブルは少なくありません。

送迎時の対応については、できる限り詳細に家族と取り決めておくとよいでしょう。


奥様に介助を任せてよいか?

本来、職員がすべき介助業務であっても、家族が自ら介助すると申し出ればお任せしても問題ありません。

しかし、それは家族に任せても安全であると判断できる場合に限られます。

本事例では、職員でも難しい歩行の介助を行っており、これを高齢の奥様に任せることは到底安全とはいえません。

誰の目から見ても「介助を任せるのは危険」と判断される場合は、家族の申し出をお断りし、居宅内の安全な場所まで介助する必要があります。

デイサービスの送迎範囲においても、家族が職員による介助を辞退(拒否)したことについても、デイサービス側の「過失はない」という主張は通りませんから、きちんと謝罪をした上で、損害を賠償しなくてはなりません。

なお、利用者自身が職員の介助を辞退(拒否)して転倒・骨折した事故の裁判で、事業所の過失とされた次のような判例もありますので注意してください。


【情報提供元】

月刊デイ

https://daybook.jp/day.html

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