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認知症の方の自己遂行を促す食事介助の工夫

2025.02.18

これまでが、これからの力になる

認知症の方は記憶障害があり、新しいことを覚えるのが苦手ですが、昔のことはよく覚えている方が多いです。
これが認知症の方の強みだと思っています。
認知症の方のケアに必要なのは、これから新しく覚えたり学んだりすることよりも、「これまで積み重ねてきた過去を現在に生かす工夫」なのではないでしょうか。
過去を生かすケアは心身になじんで心地よさを与え、自己遂行を促すきっかけをつくります。


■ポイント1「利き手側から介助しましょう」

右利きの方は右手で箸やスプーンを持ち、ご飯を右方向から口元へ運ぶ動きを繰り返しています。
右利きの方にとって、左方向から箸やスプーンが口元に近づいてくる経験はほとんどありません。
もし、介助者が非利き手方向から介助したら、認知症の方は食事に対する違和感を覚えるかもしれません。
食事介助を左右どちら側から行うか迷ったら、その方の利き手を意識してみてください。


■ポイント2「視界に入りすぎないように介助しましょう」

あなたは目の前に座っている人に、大口を開けて口の中を見せられますか?
おそらく、恥ずかしさや遠慮があって積極的に見せたくないのではないでしょうか。
認知症の方も同じ気持ちです。
介助者が正面に座っていると、認知症の方は口を開きにくくなり、食事がしにくいと感じるかもしれません。
口の開きが不十分な方がいたら、正面を避け、視界に入りすぎない位置に移動してみてください。

<こんな方も>
介助者が積極的に視界に入ったほうがいいケースもあります。
「介助者がおいしそうにご飯を食べる姿を見ることで食欲が湧いてくる方」や「介助者が目の前で口を開く姿を見せることで、それを真似て口を開いてくれる方」もいます。
その方にとって好ましい位置を見つけましょう。


■ポイント3「腕を支えるときは、手首と肘の2点を支えましょう」

スプーンを口元まで運ぶには、「手首を曲げたりひねったりする」「肩を持ち上げたり開いたりする」など、腕全体を総動員した動きをしています。
その動きを介助するために、介助者は認知症の方の手首と肘の2点を支えましょう。
2点の安定した支えがあることで、介助者は認知症の方の腕全体の動きを感じ取りやすくなり、必要最小限の介助量でスプーンを口元まで運ぶ動きを手伝えます。
認知症の方が長年やり慣れた腕の動きを再現できれば、ご自分で腕を動かすきっかけがつくれます。


■ポイント4「スプーンを口元まで運んだら、待ちましょう」

上半身を一切動かさずに、手だけで食事をするフリをしてみてください。
違和感に気付くと思います。
私たちはご飯を口元まで運ぶと同時に、必ずといっていいほど口元をご飯に近づけるように上半身を動かしながら食事しています。
介助者がスプーンを持ち、認知症の方の口元にご飯を運んだら、そのまま待ちましょう。
認知症の人が自ら上半身を動かし、口元を近づける動きをしてくれたら、それは立派な食事への参加だと思います。
上半身を動かしにくい方は、介助者が背中をそっと支え、ご飯を口元まで運ぶ動きに合わせて前かがみを促す介助を行ってみてください。


■ポイント5「道具が使えない方も、少しでも参加してもらいましょう」

認知症の方は、箸やスプーンを手にしても食事の道具だと分からず、上手に使えないことがあります。
しかし、食事のときにしてきた体の動きは記憶に残っていることがあります。
ポイント4で食事をするフリをしたとき、道具がなくても動きの再現が可能だったのではないでしょうか。
道具が使えない方を食事介助するときは、スプーンを持てなくても、介助者がスプーンを持つ手に認知症の方の手を添えてもらいましょう。
左手が空いていれば、料理が盛られた小さい器を持ってもらい、そこからすくいましょう。
全介助にならざるを得ないケースもありますが、ほんのささやかでも参加してもらう工夫をすることが、ご本人の「もっと食べたい」「もういらない」という食事への意思を引き出していくと思います。


■ポイント6「嚥下よりも咀嚼を促しましょう」

ご飯を食べているつもりで、16回エアーモグモグをしてみてください。
すると、ゴックンと喉を鳴らしたくなりませんか。
咀嚼を繰り返せば、その後に自然と嚥下が起こります。
一切の咀嚼なしに突然嚥下だけしようとしてもうまく飲み込めません。
認知症の方は嚥下のタイミングが分からず口に食べ物を溜め込むことがありますが、噛み続ければ無意識に飲み込みまでたどり着ける方が多いです。
食事介助中の声かけとしては「飲みこんでくださいね」と嚥下を促すよりも「よく噛んでくださいね」と咀嚼を促す方が好ましいと思います。

<こんな方も>
食事介助中になじみの方言を交えた声かけをしたり、味の感想を聞いたりすることで食事が円滑に進む方もいます。
その一方で、会話に注意が向くあまり咀嚼や嚥下を忘れ、食事が進まない方もいます。
そういった方には、あえて声かけを控え、視界からも外れ、無言で介助する工夫が必要です。


【情報提供元】

認知症ケア最前線

https://dayshop.biz/

【認知症ケアについて学ぶ】

実践!認知症ケア研修会2025

https://tsuusho.com/dementia

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