2025年6月2日(月)に第121回社会保障審議会「介護保険部会」が開催されました。
今回は下記議題について話し合われました。
今回の議論のまとめ
【1】地域包括ケアの推進
[背景]
2025年、2040年問題を見据え、住民が住み慣れた地域で暮らし続けられる体制づくりが急務。
[主な論点]
・医療と介護の一体的提供体制の必要性
・自治体主導による多職種連携、地域ケア会議の活性化
・地域包括支援センター、保健師等の役割強化
・生活支援サービスの多様化・社会資源の開発
【2】認知症への対応
[背景]
認知症高齢者の増加を踏まえ「共生」と「予防」の両立を目指した支援体制の整備が必要
[主な論点]
・初期集中支援チームによる早期対応
・認知症地域支援推進員・認知症サポーターによる地域ぐるみの支援
・家族介護者支援(相談、レスパイト)や専門職研修の充実
・社会参加、フレイル予防との連携(運動・栄養・交流)
【3】要介護認定制度の見直し
[背景]
現行制度の複雑さや現場負担、状態像とのミスマッチの課題とAI・ICTの活用や調査項目の再構成などの可能性を提示
[主な論点と意見]
・認定項目の整理、判定の自動化・精度向上
・地域格差と混乱を防ぐ制度設計が重要
・多くの委員から慎重論として「まずは十分なデータ検証を」「現場の混乱は避けるべき」など
【要介護認定制度の見直しに伴う影響整理】
[期待される効果]
・認定の迅速化・公正化(AI・ICT活用)
・生活実態に沿った評価
・ケアマネジメントとの連動強化
[想定される懸念]
・基準変更による利用者・事業者の混乱
・市町村の業務負担増
・地域間格差の拡大
【要介護認定と介護予防との関連性】
[現行の課題]
・「非該当者」が必要な支援につながらない場合がある
・軽度者の支援が制度に乗りにくい
[議論の方向]
・状態像に応じた柔軟な支援設計
・地域分析に基づく予防戦略との連携
・認定制度と総合事業の一体的運用が必要
【今後の検討スケジュール(案)】
・2025年夏頃まで:基本的な課題・論点整理(保険者機能、認定制度、地域ケア体制等)
・2025年秋以降:制度見直しの方向性に関する具体化・制度案の検討
・2026年春頃(年度末):報告書取りまとめ・制度改正に向けた最終整理
■日本通所ケア研究会事務局の雑感
【1】への見解
地域包括ケアの推進には、単なる制度整備にとどまらず、地域コミュニティの活力再生や住民一人ひとりの「自己決定」を支える仕組みの確立が鍵になります。
また医療・介護の連携強化も必要不可欠ですが、現場の多職種が日常的に顔を合わせる場づくりや、ICTを活用した情報共有の促進がより一層求められます。
自治体のリーダーシップと住民参加の両輪で、それぞれの地域課題を柔軟に捉えた持続可能な体制づくりが重要だと思います。
【2】への見解
認知症ケアは早期発見・早期介入が当事者とその家族のQOLに直結します。
初期集中支援チームの効果を最大化するには、地域全体の理解と啓発活動、そして支援者の専門性強化が不可欠ではないでしょうか。
また、運動や社会参加を促す環境整備は介護予防・認知症予防に加え、地域の孤立防止にもつながるため、包括的な視点での取り組みが求められます。
【3】への見解
要介護認定の見直しは、介護サービスの質と公平性を高める大きなチャンスである反面、ご利用者の生活状況は多様かつ複雑であり、単純なAIなどの活用による機械判定だけに頼るだけでは不十分な気がします。(AI活用は効率化を促進する反面、きめ細かな人間判断を補完する設計が同時に必要となります)。
AIなどの活用は補助的な役割に留め、最終的な判断は専門職が行うハイブリッド方式がやはり望ましいのではないでしょうか。
変革は必ず摩擦を生みます。
制度変更を行う場合は混乱回避のため、段階的な導入と現場研修の充実が必要になるのではないでしょうか。
【情報提供元】
第121回社会保障審議会介護保険部会の資料について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_58419.html
【お役立ち研修】