第23回日本通所ケア研究大会講師協賛企画インタビュー動画
【誰に・どんな価値を届けるか】通所リハビリの再定義…求められる「マーケティング」と「マネジメント」の融合
動画の内容を要約しました。
[質問]
通所リハビリテーションを取り巻く環境での課題は何ですか?
[回答]
通所リハを取り巻く現状と課題
通所リハビリテーションの現場では、報酬制度の厳格化や稼働率重視の運営により、本来の「リハビリとしての専門性」が埋もれつつあります。
リハビリデイや通所介護との違いが伝わりにくく、「費用対効果が見えない」「高い」と感じられてしまう構造も課題です。
また、ケアマネジャーの理解不足や紹介構造の偏りもあり、通所リハの本来の強み──機能回復・再発予防・自立支援──が地域に十分浸透していません。
結果として、通所リハが「どんな価値を提供する場所なのか」が見えにくくなっているのです。
[質問]
リハビリデイと比較された時に利用金額が安い方へ誘導されがちですが、高いと思わせないための工夫はありますか?
[回答]
高単価を“高い”と思わせないための価値設計
単価の高さを正当化するには、“費用”ではなく“成果”で語ることが必要です。
たとえば、ADL改善・再入院抑制・栄養・口腔・認知などの包括的アプローチを数値と事例で示すことで、「結果に対して適正な価格」という理解を広げられます。
そのためには、「アウトカムを測定・可視化する仕組み」「ケアマネや家族に“見せる”説明資料・症例発信」「利用者の変化をスタッフ全員が共有し、言語化する文化」が揃って初めて、「高くない」ではなく「納得できる」という評価が得られます。
[質問]
事業所運営に「マネジメント」と「マーケティング」を先生がポイントとして挙げられる理由を教えてください。
[回答]
「マネジメント」と「マーケティング」が鍵となる理由
事業所運営を成長させるうえで欠かせないのが、「マネジメント(内向き)」と「マーケティング(外向き)」の両立です。
マネジメント
→組織体制・人材育成・業務プロセスを整備し、提供品質を高める
マーケティング
→理念・強み・成果を地域や紹介者に発信し、理解と信頼を得る
この2つは別物のようで、実は“循環構造”を成しています。
「内部の整備(マネジメント)」が「外部の信頼(マーケティング)」を生み、その信頼が再び組織への動機付けや紹介につながる。
この循環を意図的にデザインすることが、現代の事業所運営の本質です。
[質問]
「マネジメント」と「マーケティング」の両輪をチームとしてうまく回していくためにまず取り組むべきことは何ですか?
[回答]
両輪をチームで回すための第一歩
まず取り組むべきは、理念と現場の再接続です。
経営が掲げる理念や戦略を現場スタッフが理解し、自分の仕事と結びつけられるようにする。
そのためには、
・経営とスタッフが対話する場の設計
・役割ごとの目的共有
・成果をチーム全員で喜べる“可視化の仕組み”
を整えることが効果的です。
理念が「言葉」で終わらず、「行動」に変わるチームづくりこそが出発点です。
[質問]
介護サービス最大の宣伝ツールは「口コミ」であり、自分たちの関わりが印象に大きなウェイトを占めることをスタッフへ浸透させる工夫を教えてください。
[回答]
口コミを生む現場づくり
介護・リハの最大の広告は“口コミ”です。
その口コミは、ポスターや広告ではなくスタッフの関わり方から生まれます。
印象に残る関わりを生むには、スタッフ自身が「自分の行動が事業所のブランドを作っている」という自覚を持つことが不可欠。
そのために有効なのが、
・利用者や家族の声を定期的にチームで共有する
・良い関わりを可視化し、言語化する「振り返り文化」
・組織的に発信する仕組み
これにより、スタッフが自然と「自分たちが事業の価値を広めている」という誇りを持てるようになります。
[質問]
リハビリ職の働き方・キャリアデザインとして病院勤務を経験した方が良いのか?
[回答]
リハ職のキャリアデザインと病院経験の位置づけ
「病院勤務を経験すべきか」という問いに対しては、“どんな視野を得たいか”によるとされています。
急性期や回復期での経験は臨床スキルの土台として有効ですが、在宅や介護現場では「生活支援」「家族支援」「社会参加」など、異なる文脈での専門性が求められます。
重要なのは“専門性の横断”です。
医療・介護・在宅の各ステージを理解し、連携の中で成果を出せる「スーパージェネラリスト」を目指すこと。
そのために、ローテーションやメンタリングを通じた計画的キャリア支援が必要です。
[質問]
病院から介護現場へ異動となったリハビリ職が戸惑うケースが多いという声をよく聞きます。それについてどう思われますか?
[回答]
病院から介護現場に異動したリハ職の戸惑い
病院では「治療」が目的、介護では「生活」が目的──このギャップが最大の戸惑い要因です。
“治す”から“支える”への思考転換が求められます。
この変化を乗り越えるためには、
・ケアマネ・看護・介護職との協働スキル
・環境調整・自立支援・社会参加への理解
・自分の専門性を再定義する内省の機会
が不可欠です。
一方で、この変化こそがリハ職にとって“成長の跳躍点”にもなります。
まとめ:理念×実装×発信で通所リハは再生できる
通所リハビリが地域で必要とされ続けるためには、
・理念とビジョンに基づく明確な方向性
・チームで動くマネジメントとマーケティングの統合
・成果を見せ、信頼を得るアウトカム文化
・自走できる人材と誇りある現場づくり
この4つが揃うことが欠かせません。
「理念を語るだけでなく、実現できる仕組みを作る」
これが、これからの事業経営の条件です。
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