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【その介護技術大丈夫!?】介護技術を用いたかかわりを見直そう

2025.10.26

介護技術を用いた関わりを見直す――“営み支援”という視点

介護の現場では、「食事介助」「立ち上がり」「トランスファー」といった場面ごとの関わりが、しばしば“イベント”のように切り離されて実行されがちだ。
食べさせられれば良い、移乗できれば良い…その瞬間だけを成立させる関わりは、本人の生活全体に通底する力を掬い上げない。
私たちが本来めざすべきは、技術によってその人の有する能力を見極め、生活を営む力を少しでも長く維持することだ。


介護保険法は、「尊厳の保持」と「有する能力に応じた自立した日常生活」を掲げる。
しかし“自立”はゴールではない。
むしろ、「営み」を支えるプロセスの一部にすぎない。
人は誰しも、今日という生活を明日へとつなぐ。
その連続性を支えるのが介護技術であり、知識だけでも、やさしさだけでも届かない領域を橋渡しする。


例えば食事場面。座位保持が崩れている人に、ただ「自分で食べてもらう」自立支援を求めても、誤嚥や手づかみに至りやすい。
ところが、適切な座位を提供した瞬間、スプーンではなく箸を選び、最後まで自分で食べ切る力が立ち上がることがある。
これは魔法ではない。
姿勢や支持基底面、上肢の可動性といった身体条件を技術で整えることで、潜在していた能力が表に出るのだ。


立ち上がりも同じだ。
浅く座り、お辞儀をして重心を支持基底面に落とし込む…理由がわかれば、私たちの声かけは「気をつけて」ではなく、重心移動を促す具体的な誘導へと変わる。持ち上げるのではなく、本人の下肢筋力が自然に“使える環境”を整える。
介助者自身も足幅、膝つき、体幹の位置を整えるボディメカニクスで腰痛を予防しつつ、望ましい関わりを実践できる。


認知症ケアにおいても、行動・心理症状と呼ばれる現れを“問題”として押さえ込む前に、不安・恐怖・不快の増幅を招いた関わりがなかったかを見直したい。
痛みや恐怖を無視したトランスファーは、暴言・拒否を誘発し、関係性をさらに硬直させる。
逆に、触れ方や手順、速度を整え、予測可能性を高め、身体の使い方を“思い出せる”環境をつくると、症状は静まり、生活のリズムが戻る。


ここで鍵になるのが「望ましい/望ましくない」という評価軸だ。
適切/不適切はしばしば介助者の主観になる。
だが“望ましいか”を基準にすれば、主語は常にご利用者本人であり、目的は生活の継続に据え直される。
寝たきりと呼ばれる人にも自立はある。自ら呼吸し続けるための楽な姿勢づくり(ポジショニング)は、緊張や拘縮を予防し、穏やかな日常の呼吸を守る技術だ。


介護は医療モデルの「治す」ではなく、生活モデルの「続ける」を支える営みである。
だからこそ、私たちは気づきの芽を育てる学習→実践→省察を重ね、職員のレベルに合わせた介護ではなく、心身の状況に応じた介護へと戻っていく必要がある。
技術は裏切らない。技術があるから、本人に届く。


介護職は“技術職”でもある。
知識と技術をもって初めて、私たちは生活を営む力に寄り添える。
関わりを見直すとは、方法を変えることだけではない。
誰のため、何のためを問い直し、望ましい一歩を積み重ねることだ。


【情報提供元】

第23回日本通所ケア研究大会

https://tsuusho.com/conference/

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