「できるか」から「どう感じるか」へ
30年前の現場では「早さ・手数」が評価され、利用者のペースや好みは後回しになりがちでした。
介護福祉士法の改正(2007年)により、介護職員に求められる能力は「入浴・排泄・食事そのもの」から「心身の状況に応じた介護」へ変わっています。
つまり、身体理解と感情理解の双方が求められる専門職です。
さらに「人」伝えられることも専門性の一部であり、家族・新人・地域へ説明できて初めて介護福祉の専門家と言えます。
脳の働きと「記憶」の要
視覚(後頭葉)→認識(頭頂葉)→計画(前頭葉)→行動というプロセスの要は記憶です。
私たちは「これは何?」「どう使う?」を都度、記憶に問い直しています。
ゆえに記憶障害は日常行為の根幹を揺るがすのです。
アルツハイマー型認知症の方の中核症状の整理
[必ずある症状]
記憶障害
[いずれかが加わる]
失語/失認/失行/実行機能障害
[他に多い]
見当識障害、理解力・判断力低下
[進行像]
・初期:新しいことを覚えにくい(同じ質問の反復など)
・中期以降:覚えていたことを忘れる(既存の記憶の脱落)
同じ質問に何度も答えるのは「適切な関わり」。
反対に「さっき言いましたよね」という発言は認知症の方の不安を増幅しやすい。
なぜ「焦り・不安」を避けるべきか
[認知症の進行との関係]
・ストレス(焦り・不安)は進行に影響し得る。
・安心は進行を緩やかにする方向に働く。
[BPSDの引き金]
・焦り・不安・不快などの内的ストレスがBPSDを誘発。
・安心環境では出にくくなる。
行動だけでなく「感情」を見ることこそ、専門性の核心
家族も行動の変化には気づくが、見えない感情(焦り・不安)には気づきにくい。
ここに介護福祉の専門職の価値がある。
行動の意味を記憶障害との連関でとらえ、本人の感情に応じる。
まとめ
BPSDは感情と記憶のギャップのサイン。
専門職は不安・不快という見えない引き金を捉え、安心を創造し提供する。
その場しのぎの対処だけで終わらせないことが、本人の尊厳とQOL、そしてスタッフの負担軽減に直結するのです。
【情報提供元】
感情理解からひも解く認知症ケア
【お役立ち研修】
第23回日本通所ケア研究大会
https://tsuusho.com/conference/
脳の働きを理解し心の声に寄り添う!実践でひも解く認知症ケアセミナー
https://tsuusho.com/dementia_explained