
2025年11月18日(火)に開催された「第2回地域生活維持政策小委員会(地域経済産業分科会)」の内容をまとめました。
会議の全体像
この会議では、日本が直面する人口減少下で「地域に不可欠なエッセンシャルサービス(小売・交通・物流・医療・生活インフラなど)」をどう維持し、国内経済の維持・成長につなげるかが主要議題となっています。
エッセンシャルサービスの供給不足は、住民の流出→労働力減少→地域経済縮小という悪循環を招くとして、2040年までの影響や実践事例、政策の方向性が示されました。
エッセンシャルサービス不足の経済影響
試算では対応策を講じない場合、2040年に最大76兆円のGDP損失が生じる可能性があると報告されました。
・実質GDP目標:750兆円
・供給不足による損失:約16~76兆円
・影響範囲:小売・交通・医療・物流・インフラなど基盤産業全体に波及
これは過疎地域だけでなく都市部も含む「全国的課題」である点が強調されました。
事業者ヒアリング
地域を支える企業から、好事例として実際の取り組みが報告されました。
[ローソン]
・地域共生コンビニ
・中山間地域など人口減少地に積極出店
・公共・行政サービスを一体提供
→マイナンバーカード関連、郵便ポスト、ATM
→Web服薬指導、処方箋対応
・技術活用:セルフレジ、清掃ロボット、アバター遠隔サポート
・災害対応:備蓄米炊き出し、太陽光での充電支援
→コンビニを生活基盤のハブとして再設計
[日本生協連・コープさっぽろ]
・組合員3,088万人(世帯加入率39.5%)
・個配、見守り、買い物送迎など高齢者支援を全国展開
・コープさっぽろは北海道の83%の世帯が加入
→移動販売97台
→176市町村と見守り協定
→生活圏のカバー率が極めて高い
・宅配×見守り×移動販売で“生活圏”そのものを維持
[第一交通産業]
・タクシーによる地域支援
・交通空白地帯5,500か所を既にカバー
・災害時の避難支援、高齢者の“見守り110番”など多様化
・業界全体で830社、4.5万台が共同仕入れ、営業で効率化
→交通=移動だけでなく、地域福祉インフラとして機能
[上野ガスサービス]
・多角化によるインフラ維持
・ガス、電気、宅配水、訪問看護、給食配送、火葬場運営
・災害時の中核充填所、給油所として機能
・子ども数に応じたガス料金割引(少子化対策)
→「地域に残る企業」が複数の生活基盤を支えるモデル
浮き彫りになった主な課題と解決策
[課題1]人口減少によるサービス供給不足
・エッセンシャルサービス維持が困難
・経済への影響が甚大(最大76兆円損失)
→解決策として国家的成長戦略として位置づけ、制度的支援を強化
[課題2]地域交通の担い手不足(特に小規模タクシー)
・共同仕入れ、共同営業によるコスト削減(830社で実施)
[課題3]地域活動の担い手減少(自治会・シルバー人材の不足)
・企業が人材を地域に提供する“社会参画型支援”の促進
[課題4]労働者協同組合の立ち上げ期の資金難
・経営融資・助成金・社会的金融での支援が必要
[課題5]労働者協同組合の認知度不足
・広報強化・普及啓発の必要性が指摘
委員からの意見(論点の深掘り)
・プラットフォーム化が鍵
→交通・物流・小売など複数の生活インフラを“束ねる”モデルが重要
→既存事業者を活かしたプラットフォーム整備が有効
・担い手の役割認識と情報発信
→小売・交通・生協などが「地域の経済基盤である」認識を高めるべき
→社会的認知を高める広報を国が後押し
・労働力、スキル開発
→多角化に伴うスキル拡張
→兼業、副業の柔軟な受け皿づくり
→DXによる省力化
今後の政策方向性
・支援のあり方
→赤字補填ではなく、前向きな取り組みを支える支援へ重点化
→金融支援+認知度向上支援
→官民連携の仕組み強化
・制度的枠組みの検討
→協同組合・NPO・公益法人など、多様な担い手が機能できる制度設計
→地域協働プラットフォームの構築
→省庁横断の対応が必要
全体のポイント
・人口減少が続く中、生活に必要なサービスの維持は経済の根本問題
・放置すれば最大76兆円の経済損失
・既存企業の多角化や連携、協同組合の活用が鍵
・「交通×小売×宅配×インフラ」の横断的プラットフォームが求められる
・国は金融支援だけでなく、制度設計や認知度向上による後押しを検討へ
地域経済の維持・人口減少対策・生活サービスの再設計が産業政策の中核テーマになりつつあることを示す会議でした。
【情報提供元】
第2回 地域生活維持政策小委員会
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/chiiki_keizai/maintaining_local_life/002.html
【お役立ち研修】


















