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第184回社会保障審議会介護給付費分科会を傍聴して

2020.09.07

会長:妹尾弘幸の報告

2020年9月4日(金)に「第184回介護給付費分科会」が開催されました。

今回は、「感染症や災害時の対応強化」「地域包括ケアシステムの推進」の2点がテーマでした。

※あらかじめ断っておきますが、文章内容はあくまでも私の個人的かつ勝手な感想・考えでありますのでそのつもりで読んでいただければ幸いです。


■感染症や災害時の対応強化

感染症対応などでは、「災害時等での事業継続体制の構築」と「報酬等の臨時的措置の取り扱い」が論点となりました。

災害時でも安定・継続してサービスが提供できる体制の構築については、被災時でも事業継続するための計画「 BCP:事業継続計画(Business Continuity Planning)」の必要性について意見が多数出ました。

今回の新型コロナウイルス感染症に対する臨時的措置の取り扱いについては、恒久化を希望する意見と、臨時とすべきという意見、保険ではなく他の財源から拠出すべきなどの意見が出ましたが、新型コロナウイルス感染症の結果をよく検討して結論を出すべきという意見に落ち着きそうです。

BCPについては、運営基準に記載するべきという意見、運営基準に記載するのであれば報酬上の評価をきちんとすべきなど様々なな意見が出ましたが、BCPを設定することへの反対意見は見られませんでした。


■地域包括ケアシステムの推進

地域包括ケアシステムでは、

(1)医療と介護の連携、看取りケア

(2)認知症ケア

(3)過疎地のケア

の3点がテーマに挙げられました。

看取りケアでは、徐々に介護施設などでの看取りが増加している中で、本人の尊厳や希望を保持、尊重する方策が論点として出されました。

認知症のBPSDへのケアでは、その発生原因をしっかりアセスメントし対応していくことへの評価が必要であるとの意見が出ました。

また、現在の認知症自立度は「大変さ」を評価しているので、認知症の評価としては適切ではないため、他の評価を開発すべきとの意見も出ました。

また、過疎地域に対する意見も、基準の緩和などの要望や自治体の関与の強化など様々な意見が出ました。


会長:妹尾弘幸の視点

BCP(事業継続計画)の作成を

災害時などでも、「安定して事業を提供できる体制の構築」は誰が見ても異論は出ない事だと思います。

他の産業では、BCPが広がりつつあり、医療や介護は一般の産業以上に継続提供が求めら れます。

次回改定では、BCPの策定が運営基準にも設けられ、作成促進の政策誘導として、加算対象になるかもしれません。


認知症ケアについて

認知症のBPSDに対するケアついては、私は15年以上前からBPSDの発生原因を分析し、その原因に対してアプローチする「根治ケア」の必要性を説いてきました。

ようやく議論になり始めましたことは、喜ばしいことと考えます。

ただこの考え方は「○○方式」などというべきことではなく、ケアとして当たり前の考え方だと思います。

また、会議中にも出た「認知症自立度の判定評価」ですが、現在の評価判定基準が混乱しており、適切に行われていない事を至急是正すべきだと考えています。

本来は、介助が必要なレベルとしてⅢが設けられているのに、評価で例示されてている「大声」「奇声」「暴力」「異食」などのBPSDが無いとⅢの判定にならないと誤解している人が多いことが問題です。

「大声」「奇声」「暴力」「異食」などの症状は、適切なケアを提供すれば消滅し、不適切な対応をすればそれまで出ていなかった人でも発生しうる、いわば周囲の対応・環境の影響などによって、どのようにでも変化し、本人の本当の自立度ではなく、本人評価としては適切ではないといえるのではないでしょうか。


過疎地のケアの問題について

小規模多機能の登録人数緩和の要望に対して、「サテライトの制度で対応可能」という厚生労働省側の回答に、有識者側からもう一つ新たに事業所を開設するような余力はないなどの反論意見も出ましたが、制度を理解していれば、そんなことはないと分かります。

本体の登録を減らしてサテライトに回せばよいだけで、29人の上限を超えるくらい利用者がいるのに、事業者が算入しない本当の理由は「職員の確保」であることは明確です。

介護の一番の問題は「人材確保」です。 特に喫緊の課題は、夜間の身体介護が出来る訪問介護の職員確保だと思います。

「介護保険制度は公的なサービス・制度だから、全国どこにいても同じレベルの介護が受けられる事を担保することが大切」という意見がよく出てきますが、それならば、基準を緩和してはダメではないでしょうか。

そもそも、介護技術のレベルは法人・事業所でも大きく違います。 「自治体が関与して措置制度のようにすると良い」という意見も出ましたが、こちらも結局は、職員がいないということが最大の原因になると考えられるので、自治体で施設を作り、自治体でお金を出しても解決困難だと思います。

少々加算を上げようが、基準緩和をしようが、「職員確保」をどうするかを考えないと解決できないと思います。 労働人口が不足する地域における介護の問題は、今後どんどん増加していきます。

その状況の中で、職員をどう確保していくのかは、介護従事者の待遇を良くするか、CBC (コミュニティ・ベイスド・ケア)を導入して、昔、家族で家族を介護していたモデルを「地域の人で地域の人を介護する」か、地域ごと移住するなどしかないのではないでしょうか。

この過疎地ケアの問題、労働人口減の問題、消滅地域問題については、早急に本格的に対策を立てる必要がありのではないでしょうか。


■第184回社会保障審議会介護給付費分科会

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_13243.html


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