利用者がイスから立ち上がり転倒…「歩かせないでと言ったのに!」と怒る家族
利用者Yさん(82歳女性、要介護3)は、重度の認知症です。2年前に転倒して大腿骨を骨折し、当初はゆっくり足を引きずりながら歩いていましたが、徐々に歩行機能が回復し、最近はよく歩くようになりました。
娘さんは2年前の骨折事故で苦労したことから、「転んで骨折すると困るから、歩かせないでほしい」とデイサービスに要求してきます。
ある日、Y さんは帰宅送迎の直前に突然イスから立ち上がり、デイルームにいたシゲルさんがすぐに駆け寄りましたが間に合わず、そのまま前方に転倒してしまいました。
幸いけがはありませんでしたが、電話で連絡を受けた娘さんは「歩かせないでと言ったのに、何で歩かせるのよ!」と強く抗議しました。
日頃から利用者の自立した生活支援をモットーとしているため、主任のミチコさんは「私どもの介護方針ではご本人の意思を尊重しますので、座ることを強制することはできません」と答えました。
すると娘さんは、「デイサービスの方針は私には関係ないわ。あなたの都合で歩かせているんだから、あなたが責任を取りなさいよ。骨折していたら治療費は出してもらいますからね」と言って電話を切ってしまいました。
家族の主張に、真っ向から正論で対抗してはいけない
なぜ、娘さんはデイサービスの説明に対して、これほどかたくなになってしまったのでしょうか?
家族の中には、利用者の生活行為を制限しようとする人がいます。
それに対し、介護職員は利用者のより良い生活を援助することが使命ですから、正義感からつい正論を強く主張してしまう場合があります。
すると、家族も利用者の自由を尊重したいのにできないというジレンマを抱えているので、カチンと来て猛烈に反発するのです。
事例のような場面では、家族の立場に配慮した対応が必要です。
ここがN G!
デイサービス側が正論を強く主張してはいけない
たとえ家族が、利用者にとってマイナスになるようなことを主張しても、真っ向から否定してはいけません。
家族には家族なりの事故に対する苦労があるため、「私たち家族の苦労も分からずに…」と思われてしまいます。
これならO K!
家族の考えを否定せず、理解を示す
正面から「あなたの考えは間違っている」と否定するのではなく、「家族の気持ちも理解できるけれど」というスタンスで対応しなければなりません。
家族の立場に配慮して話をすれば、不要なトラブルを回避できます。
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