関節可動域低下とその理由
不動による拘縮
片麻痺によく見られる関節可動域の低下は、不動による拘縮によって起こります。
脳血管障害などの麻痺により筋収縮を伴った関節運動が行われず、軟部組織が変性し、関節可動域の低下を引き起こします。
関節包の短縮、骨棘形成などによる関節の変形、皮膚や皮下組織、靭帯や筋膜を含む筋肉などの線維化などが原因として挙げられます。
脳卒中片麻痺による姿勢筋緊張への影響
脳卒中片麻痺による拘縮の筋緊張は、単なる脊髄レベルでの問題ととらえるよりも、姿勢筋緊張としてとらえるべきだと考えます。
姿勢筋緊張は、本来、可動性と安定性がともに存在する状態であり、重力に抗するだけの高い緊張を保ちつつも、円滑で協調的な運動を可能とする低い緊張も備えています。
しかし、脳血管障害により、大脳皮質や脳幹からの信号で運動を誘発・調整することが難しくなり、四肢末梢部の筋緊張に影響を及ぼしたり、末梢部からの情報(体性感覚や固有感覚など)が上位中枢へ十分に入力されないことで、姿勢筋緊張に影響したりします。
つまり、関節の拘縮状態はあくまでも結果であるということです。
関節可動域の拡大が得られたとしても、歩行後に再び関節可動域制限が生じたり、痙縮、連合反応などが助長されたりしてしまうのは、姿勢を重力に抗して保持できない弱さが、どこかの関節や筋肉にあるためです。
関節に硬さがあれば、ほかに弱い部分が隠されているかもしれないと考えていくことが大切です。
筋緊張の評価
例えば、触診したときに抵抗を感じた場合には、筋の緊張状態は亢進状態にある可能性が高く、対象者の精神活動は触れられることに対する拒絶、逃避、恐れが生じていると考えられます。
セラピストは全身の状態を確認し、筋緊張が高まっている原因がどこにあるのか観察していく必要があります。
筋を適切な長さに整える
脳卒中片麻痺の場合、筋の長さが短くなると、張力がすぐに上昇してしまいます。
張力が高すぎると筋の長さは得られません。
また、関節可動域制限が生じると、関節の回転力(トルク)が得られなくなります。
さらに、麻痺による低緊張が生じると、素早く求心性の収縮を作れなくなってしまい(運動を起こすときに素早く筋活動を生み出せない)、非麻痺側、麻痺側を問わずほかの関節などで代償活動が生じてしまうのです。
関節拘縮を予防するためには、円滑で協調的な運動性を促すと同時に、筋収縮を伴った安定性を改善し、重力に抗する姿勢と支持性を得ることが大切です。
そのためには、筋の柔軟性を促し関節可動域を拡大するアプローチを行います。
ただし、筋は短すぎても長すぎても適切には収縮しないことに留意します。
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