【2025年6月20日開催「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会(第4回)」】
高齢化が進む中で、多様化する高齢者の住まいニーズに応えてきた有料老人ホーム。
しかし近年、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)との違いが分かりづらくなっており、利用者や家族がサービス内容や責任体制を十分に理解しきれないまま入居に至るケースも見られます。
こうした課題に対応するため、厚生労働省では「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」を継続開催。
2025年6月20日の第4回会合では、今後の制度的方向性や運営上の論点が提示され、介護事業者にとっても注視すべき議論が多く展開されました。
有料老人ホームの「役割」と「責任」を再定義
厚労省が示した方向性では、有料老人ホームは単なる住まいではなく、「生活支援と介護を一体的に提供する場」としての役割がより明確に位置づけられようとしています。
中でも以下の3点が重要な柱として議論されました。
・重度化・看取りにも対応するケア体制の整備
・24時間対応を含む、切れ目のない生活支援と介護の一体提供
・地域の医療・介護資源との連携強化
これらを踏まえ、施設運営者には「自施設がどこまで対応できるか」を契約時に明確にし、その責任範囲を利用者・家族に分かりやすく伝える体制づくりが求められます。
サ高住との違いを丁寧に説明することが信頼につながる
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)との違いが曖昧になりつつある現状に対し、厚労省は有料老人ホームとしての機能や責任の明確化を進める姿勢を示しています。
具体的には、以下のような要素の「見える化」が重要とされています。
・施設の類型と運営の仕組み
・職員配置や人員体制
・介護・生活支援サービスの範囲
・料金体系と費用負担の構造
これらをパンフレットや契約説明時に明確に示すことが、トラブルの予防と、利用者・家族からの信頼構築に直結します。
医療ニーズの高まりにどう応えるか
今後の運営において大きな課題となるのが、医療的ケアへの対応力です。
入居者の高齢化・重度化が進む中、夜間の緊急対応や看取りへの備えがより一層求められるようになります。
第4回検討会では、以下のような論点が共有されました。
・医療連携を促進するためのガイドラインや指針の整理
・夜間最少人員配置の在り方に関する検討
・看取り対応におけるプロセスの明文化と情報共有
医療機関との連携強化や、訪問看護・往診サービスなど外部支援との協働を前提とした運営方針を、事前に明文化しておくことが重要とされています。
有料老人ホームだからこそ発揮できる価値とは?
有料老人ホームは、他制度と比べて一定の柔軟性を持って運営できる点が強みです。
この特性を活かし、施設独自の魅力や強みを戦略的に打ち出すことが、今後の選ばれる施設づくりに直結します。
・入居者の生活スタイルに合わせた個別性の高い生活支援・食事・レクリエーション
・柔軟な対応によって多様なニーズに応えられる体制
・地域社会とのつながりを重視した「開かれた施設運営」
こうした要素をあらためて見直し、施設のブランディングや差別化戦略につなげることが鍵となります。
【まとめ】変化の時代にこそ、「自施設の軸」を言語化する
今後、厚労省ではガイドラインの整備や、都道府県における運営指導の見直しも進む見込みです。
事業者にとっては、制度変化を見据えたうえで、次のような対応が求められます。
・施設の機能・体制・責任範囲を見える化
・パンフレットや説明文書の更新・明文化
・職員間で理念や対応方針を共有し、体制として定着
制度が変わっても、「どのような生活を、誰に、どのように提供するか」という自施設の軸を明確に保ち続けることで、今後も選ばれる施設運営が可能になるのではないでしょうか。
【情報提供元】
有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会(第4回)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59007.html
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