
2026年1月、厚生労働省は介護分野の外国人材に関する重要な方針転換を発表しました。
特定技能1号で働く外国人介護人材について、一定の条件を満たした場合、在留期間の上限である「5年」を超えて日本に滞在し、翌年度の介護福祉士国家試験を再受験できる特例措置を認めるというものです。
一見すると小さな制度変更に見えますが、実は介護人材政策の根幹に関わる「重大な転換」と言えます。
【1】なぜ「5年の壁」が問題だったのか
特定技能1号の在留期間は原則5年です。
一方、介護福祉士国家試験の受験要件は「3年以上の実務経験」です。
つまり、外国人介護人材に与えられる試験の機会は、現実的には極めて限られていました。
•来日 → 日本語習得 → 現場適応 → 実務経験3年
•その後、受験できる機会はわずか
•5年で不合格なら帰国
この制度設計は、現場から見ると次のように映ります。
「あと一歩で介護福祉士なのに、帰国しなければならない」
実際、介護現場では、一定の技能と経験を積んだ外国人材が、制度上の期限によって失われるケースが続いてきました。
【2】今回の特例措置の内容(できるだけわかりやすく)
◆対象となる外国人
以下すべてを満たす場合に限られます。
(1)在留5年目に介護福祉士国家試験を受験していること
(2)試験結果が、合格に相当する水準に近い得点であること(厚労省が定める基準)
(3)翌年度の再受験を誓約していること
(4)再受験で不合格となった場合は帰国することを誓約していること
→ つまり「合格の可能性が現実的に見込まれる人」のみが対象となります。
◆延長期間
最長1年間(6年目まで)
◆事業者側の条件
•継続雇用の意思
•本人と共同での学習計画の作成
•支援責任者による学習支援体制の整備
→ つまり「雇うだけ」は許されません。
【3】制度の本質:これは救済措置ではなく政策転換
今回の措置は、単なる人道的配慮ではありません。
◆国の本音
介護人材が圧倒的に足りない。
そのため
・育った外国人材を簡単に失いたくない
・介護福祉士として定着させたい
・特定技能から在留資格「介護」への移行を増やしたい
という明確な意図があります。
実際、厚労省の通知でも「翌年度の国家試験合格に向けた学習支援を計画的に行う必要がある」と事業者の責務が明記されています。
これは、外国人介護人材を「労働力」ではなく「専門職」として育てる政策への転換を意味しています。
【4】介護事業者にとってのインパクト
(1)人材流出リスクの緩和
これまでの構造は「5年で帰国→採用やり直し」でした。
今回の措置により育成投資を回収できる可能性が生まれました。
(2)外国人材育成が「経営課題」になる
今回の措置は事業者にこう問いかけています。
本気で合格させる覚悟はあるか。
学習計画の作成は、形式的なものではなく、実質的な支援が求められます。
•勤務シフトの調整
•日本語教育
•国家試験対策
•メンタルサポート
外国人材の育成は、「現場任せ」から「経営戦略」へと変わります。
(3)事業所の二極化が進む可能性
今後、介護事業所は「外国人材を育てきれる事業所」「外国人材を使い捨てる事業所」という二極化が進む可能性があります。
前者は人材定着率が高まり、後者は慢性的な人手不足に陥るリスクが高まるでしょう。
【5】あなたの事業所は…
あなたの事業所は、外国人介護職員を「労働力」として扱っていますか。
それとも、「介護専門職」として育てていますか。
今回の制度は、単なる制度改正ではなく、事業者の姿勢そのものを問う政策変更でもあります。
【お役立ち情報】
介護福祉士国家試験のパート合格(合格パートの受験免除)による介護分野で「特定技能1号」の在留資格をもって本邦に在留する外国人の通算在留期間の延長に関する措置について
【お役立ち研修】
次世代介護マネジメントフォーラム
https://tsuusho.com/managementforum






















