例えば、ご利用者のAさんが、ごみ箱におしっこをしてしまったとします。
BPSD(行動・心理行動)ととらえると「放尿」ですが、これを適応行動としてとらえてみます。
上図を参考に考えると分かりやすいでしょう。
Aさんは「おしっこがしたいな~」と思い、トイレを探していました。
このとき、たまたま見たのが黒いごみ箱だったのです。
ごみ箱を見たAさんは、「これって何だろう?」と考えます。
ところが、記憶障害が進行しているため、それがごみ箱だと分かりません。
しかし、Aさんは目の前にある物を見て一生懸命考えました。
皆さんも仕事を終えて家に帰り、テーブルの上に見たことがない物が置いてあったら「これは何だろう?」と考えますよね。
「黒くて穴が開いてるぞ」、そう考えたAさんはごみ箱を何だと思ったのでしょうか?
「これは便器かな」と誤って認識してしまったのです。
そして、脳の中では次の段階に入り、おしっこの仕方を考えるわけですが、幸いにも「おしっこの仕方」は覚えていました。
何もかも分からなくなるのではなく、分かることもたくさんあるということです。
ズボンのファスナーを開け、おしっこができているのです。
おしっこの仕方は間違っていませんが、認識を誤っていたため、「放尿」というBPSDとして行動が表出してしまったのです。
ここでクリスティン・ブライデン氏の言葉をもとに、Aさんの行動を分析してみましょう。
【1】介護者にとっての問題行動は、認知症の人にとっては適応行動である
【2】私たち(認知症の人)は環境に適応しようとしている。その環境は周り(認知症ではない皆さん)がつくり出したものである
つまり、
『Aさんは黒いごみ箱という環境に適応しようとした。そのごみ箱を置いたのは誰か? 私たち介護者である。Aさんは介護者がつくった環境に適応しようとしてうまくいかなかった。それを私たちがBPSDと呼んでいるのかもしれない』
ということです。
クリスティン・ブライデン氏は、自らの体験をもとに認知症の方の行動を説明してくれているのです。
【情報提供元】
■認知症ケア最前線Vol.39(一部抜粋)
■渡辺 哲弘 氏(株式会社きらめき介護塾 代表取締役)
【認知症ケアについて学ぶ】
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■認知症の人の行動と環境から考える!その人らしさを引き出すための具体的支援方法
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■認知症の方への自立支援の環境づくりから考える!施設を利用する方々が地域で活躍する仕組みとは!
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