介護の現場では、ただ体を動かすだけでなく、ご利用者の背景を理解し、判断し、連携する“頭と心の力”が求められます。
チームケアの一員として知っておきたい5つの視点を、具体例とあわせてご紹介します。
[1]介護の基本技術と根拠
一つひとつの介護動作には、すべて「理由」があります。「なぜその方法か?」を知ることが、安全と質を高めます。
具体例
・ボディメカニクスを使って腰を痛めずに移乗する
・食事介助は「座位姿勢」と「食事ペース」がカギ
・清拭では皮膚の観察も同時に行う
・排泄ケアは羞恥心への配慮が重要
・車いすへの座り直しで姿勢を整え、活動意欲を高める
[2]リスク管理とヒヤリ・ハット
事故やトラブルは「未然に防ぐ」ことが最も大切です。
ヒヤリとした経験をチームで共有し、再発防止につなげましょう。
具体例
・靴が合わず、歩行中に転倒しかけた
・食事中に咳き込みが増えた → 嚥下機能の再評価へ
・薬を飲み忘れていたことに退所後に気づいた
・トイレ誘導時、廊下で手すりのない場所でふらついた
・レクリエーション中に椅子が動き、後ろに倒れそうになった
[3]認知症の理解と対応
「困った行動」の裏には、本人の不安や混乱があります。
“その人らしさ”を尊重し、安心できる環境づくりが重要です。
具体例
・徘徊は「家に帰りたい」という不安のサイン
・拒否は「何をされるのか」がわからないことによる防衛反応
・同じ話を繰り返すのは「覚えていない」からではなく「安心したい」から
・物盗られ妄想は、信頼関係で和らぐことも
・視空間認知の低下 → 床の模様を「段差」と誤認する
[4]家族との関係づくり
利用者の生活は、家族との関係のなかで成り立っています。
相手の立場を理解し、共感をもって関係を築きましょう。
具体例
・家族の“過剰な要望”の背景に「不安」や「罪悪感」がある
・ケアの様子を定期的に伝えると安心感が生まれる
・医療、介護職との連携を家族が橋渡ししてくれることも
・「できないこと」より「できていること」に目を向けて共有
・意見が合わないときは、まず相手の言葉を“否定せず受け止める”
[5]記録・報告・連携の重要性
ケアは“チーム戦”。
記録と報告は、次の人に「安心してバトンを渡す」ための大事な道具です。
具体例
・「疲れている様子」より「午後にウトウトし、反応が鈍い」など
・異変に気づいたら「報告・相談・記録」をセットで行う
・「気になるけど…」は早めに声に出すことが安全につながる
・朝の情報共有で送迎時の家族の様子も共有する
・「あの人に聞けばわかる」ではなく「記録で誰でもわかる」が理想
すべては「安心」と「信頼」のために
知識は現場での判断力につながり、ご利用者、事業所の安全を守る力になります。
日々学び合うことが、よりよい介護への第一歩です。
日々のケアのなかで「なんとなく」を減らし、チームで学びを深めましょう。
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