
認知症のリハビリテーション(以下、認知リハ)は、「どこまで効果があるのか」「現場では何を行えばよいのか」を問われることが多い領域です。
薬物療法のように数値で明確に示しにくい一方、適切に実施すれば生活機能の維持やBPSDの軽減につながることが多く報告されています。
ここでは、介護現場でまず押さえておきたいポイントを整理します。
【1】認知リハのねらいは“3つ”に集約される
認知症の方に対するリハビリの目的は、次の3点に大別されます。
(1)活動性の低下を防ぎ、身体機能を維持する
(2)認知機能そのものの改善・維持を図る
(3)BPSD(行動・心理症状)やせん妄を減らす
特に(1)は効果が安定しやすく、身体活動が維持されることで二次的に認知機能の低下を抑えられることが多く報告されています。
【2】「有酸素運動」の効果
近年、もっともエビデンスが蓄積されているのが有酸素運動です。
・海馬容量を増やし、記憶力向上に寄与
・前頭前野を活性化し、遂行機能を改善
・神経栄養因子(BDNF)を増加させる
・運動習慣がある人は認知症リスクが5〜6倍低い
中でも歩行は取り入れやすく、「歩きながらしりとり」「3の倍数で拍手」などの二重課題(デュアルタスク)を組み合わせると、注意機能やワーキングメモリへの効果が高まるとされています。
【3】認知刺激療法(CST)は薬物療法に匹敵?
RO(リアリティ・オリエンテーション)や回想法の有効成分を統合し、体系化したものがCST(認知刺激療法)です。
週2回×7週間のプログラムで、MMSE・ADL・QOLが改善したとする報告が多く、「薬物療法と同程度の効果」と言われることさえあります。
ただし、グループ活動による五感刺激・社会的交流・成功体験の積み重ねによって活気や注意が引き出される点が大きな価値であり、認知機能そのものを直接改善させる“訓練”とは異なる成果構造をもっています。
【4】認知リハ成功のカギ「誤りなし学習法」
認知症の方に認知課題を行う際に重要なのが誤りなし学習(Errorless Learning)です。
・間違えた情報は訂正されにくい
・誤答を繰り返すほど“誤った学習”が強化される
・成功体験が記憶の定着を促す
例えば、日付を尋ねる場面では「今日は何日ですか?」と質問するより、「今日は〇月〇日ですね」と先に提示するほうが誤りを予防できます。
作業手順を覚える場面でも、手順書の提示や段階的な声かけにより“間違わせない工夫”が必要です。
【5】間隔伸張法と手がかり消去法:現場で使える2大手法
誤りなし学習を実践的に応用したものが次の2つです。
(1)間隔伸張法
覚えてほしい情報を「1分後 → 5分後 → 10分後 → 30分後 → 1時間後」と、回答間隔を徐々に延ばして定着を促す方法。
(2)手がかり消去法
最初は強いヒントを提示し、徐々にヒントを弱めていく方法。
ただし、答えられない場合は“推測せず、わからないと言ってもらう”ことが重要です。
【6】認知リハは「全員に同じやり方が合うわけではない」
認知リハは強みの大きい方法ですが、対象者によっては逆に負担になることがあります。
次のような方には注意が必要です。
・軽度で、自分の記憶の低下をはっきり自覚している
・訓練に前向きだが、できないと気になりやすい
・失敗に敏感で、気持ちが落ち込みやすい
・心理的な支えや病状理解がまだ十分でない
初期症状の方は、ちょっとした失敗でも「やっぱりできなくなっている」と感じてしまうことがあります。
そのため、無理に課題を行うのではなく、“確実にできること”を中心に組み立て、安心できる環境で取り組めるよう支えることが大切です。
【7】認知リハは「生活機能を守るための手段」
認知機能検査の点数向上を目的にするのではなく、
・日々の生活行為の維持
・本人らしさの保持
・QOL向上
を最終的な目標に据えることが重要です。
現場で実践する際は、本人の“生活上の困りごと”に直結した課題を設定するほど効果が表れやすくなります。
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