[質問]
リハビリやレクリエーションなどいろいろな活動に誘うのですが、「できないよ。私は何にもできないから…」などと言って消極的なご利用者とのコミュニケーションに困っています。
「うつ」傾向のある方でどのように対処してよいのか分かりません。
[回答]
「防衛機制の先取り」・「メタモデル」という2つの視点を持つ
高齢者で「うつ」傾向があり、活動に消極的な方にかかわるときのポイントは、2つの視点を持つことです。
「防衛機制の先取り」
うつ傾向のある方など、何かに挑戦する前から、消極的になる方がいます。
これを「防衛機制の先取り」と三好春樹さんは著書で言っています。
防衛機制というのは、心理学の言葉です。
「すっぱい葡萄」の話が有名です。
キツネが高いところにあるブドウを食べようとするけれど、背が届かなくて食べられません。
そのときキツネは「ふん、あれはどうせ酸っぱいブドウなんだから、食べられなくてもいいや」と負け惜しみを言います。
失敗しても自分が傷つかないように、自分に言い聞かせたのです。
このように、まだ挑戦する前から、自分が失敗することを想定して、「私はできないから…」「全然ダメだから…」というのが「防衛機制の先取り」です。
最初から「私は全然ダメだから…」と失敗しても大丈夫なように言い訳をしておけば、レクリエーションに誘われたり、リハビリをしたりして、たとえうまくいかないことがあったとしても、「だからダメだって言ってたでしょ。私のせいじゃないもの。あなたが無理やり誘ったからこうなったのよ」と自分自身で納得できます。
失敗しても大丈夫な言い訳を先にしておくことによって、自分の心理的安定を保っているのです。
このような傾向のある方にかかわるコツとしては、とにかく相手は失敗を恐れていますから、失敗しないような課題を出すということが大切です。
少しでも「うまくいかなかった」と思わせてしまうと、ますます落ち込んでしまい、さらに消極的になってしまいます。
「メタモデル」
メタモデルというのはNLP という心理学の言葉で、相手の気づきを促すような質問のことを言います。
この考え方では、この方のように「もう何にもできないよ」と話すとき、ある事実を「一般化」しているとみます。
「一般化」というのは、例外や可能性を考慮せず、一般的なものとすることをいいます。
物事を一般化してしまうのは、うつ病の方や落ち込みやすい方の特徴的な思考法で、「白黒思考」や「0-100 思考」などとも言われます。
できないと思うと何もかもできないと思ってしまい、「ちょっとはできている」とか「これはできていないけれど、ここまではできた」というようなグレーなところ、0 と100 の間がないのです。
□「一般化」を表す言葉
・何にも・全然・全く・みんな・誰も
□使い方の例
「私は何にもできないよ」「全然体が動かない」「全くできない」「みんな私を嫌っている」「誰も助けてくれない」
このように、例外や可能性を考慮していないご利用者には、その考えを広げさせ、可能性を広げる意図を持って質問をします。
「何にもできない」と話すご利用者には「何にも、っていうことはないでしょう? ご自分でできていることもあるのではないですか?」と、できているほかの可能性を探るような質問をするのです。
この質問は少しユーモラスにすることが大切です。
少しおどけた調子で質問することで、相手を責めず、相手に考える余裕を作ることができます。
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