
突然ですが、「認知症」とは「病気の名前」ではありません。
原因となる元の「病気」があるのです。
当たり前のようですが、これは重要な考え方です。
認知症を持つ人たちは似たような状態(症状)にあるように見えますが、その原因となる病気によって、症状が同じ場合とそうでない場合があり、個人差がみられることも多々あります。
この個人差を考えるとき、皆さんはどのように考えるでしょうか?
「認知症への対応の原則にのっとってケアをしてみたけれど、うまくいかない」そんなとき、やっぱり「認知症だから仕方ない」と考えますか?
それとも何か他の見方があるかもしれないと考えますか?
パーソン・センタード・ケアを見直そう
認知症を持つ人の症状は、脳の障害部位、性格、周りの物理的・人的環境によってさまざまに現れます。
この考え方の基本となっているのが「パーソン・センタード・ケア」です。
パーソン・センタード・ケアは、認知症を持つ人を「一人の人」として尊重し、その人の視点や立場に立って理解し、ケアを行おうとする認知症ケアの考え方です。
このパーソン・センタード・ケアを実践してみる際に、「一人の人」として対応するには具体的にどうしたらいいのか困る人は多いのではないでしょうか。
現在では、そのために「認知症ケアマッピング」という手法が開発されています。
まず、認知症を持つ人がどんな状況にあるのかを観察することが必要です。
そして私たちは認知症を持つ人と関わる際には、自分の関わり方がよかったのか悪かったのかを振り返ります。
そしてさらに、その人の性格はどうだったから、こうなったのかもしれない、という理由付けをしながら進めることが多いかと思います。
それだけ、その人となりやその人が歩んできた人生を重要視して尊重しているからこそ、生活歴、自分の関わり方などに注目してしまうと思います。
それは非常に重要なことです。
しかし、それだけでは、なかなかうまくいかないのが認知症ケアの難しいところです。
パーソン・センタード・ケアを達成するには、
(1)性格
(2)生活歴
(3)周囲の社会心理(人との関わりなど周りからの影響)
(4)健康状態
(5)脳神経障害
その人の病気からその人を捉えることが必要です。
その中でも、特に病気、つまり認知症の原因となる病気が、認知症を持つ人の状態の根本的な特徴となっているものと考えられます。
病気別の対応が大切
例えば、私たちに頭痛がある場合は頭痛薬を飲んだり、マッサージをしたりしますね。
しかし、それでも治まらない場合は検査をして頭痛の原因は何かを探ります。
同じ頭痛でも、その原因疾患によって対応が違ってくるので、まずは原因を調べようとします。
逆を言えば、頭痛だからといって同じ対応ではいけない場合もあるということです。
認知症も頭痛の対応と同じと考えてみてください。
最初にも述べましたが、「認知症」は病気の名前ではありません。
巷では、「あの人、ほら認知入っているし…」とか「認知症に効く薬の開発」という具合に、あたかも「病気」のように扱われています。
また、おばあちゃんの具合がおかしいと思って、かかりつけ医に診察してもらうと、認知症の疑いがあるという「診断」を下されることも少なくありません。
しかしその認知症の原因となる病気によっては、似たように見える症状でも効果的な対応方法が異なる場合もあります。
そのため、やはり原因となる病気別の対応が認知症ケアを深める上では不可欠になります。
とはいえ、原因となる病気がすべての認知症を持つ人々に診断されるわけではない、というのが現状です。
介護保険のサービスを受けるために、認知症の原因疾患の鑑別診断は必須ではありません。
カルテやその人の情報を知るときに「認知症あり」と書かれているだけのものもよく見かけることがあるかと思います。
介護認定をする際には、認知症によって生活に支障を来すということが分かればいいので、専門医による診断を受けなくても、介護施設や在宅サービスを受けることができるのです。
【情報提供元】
認知症ケア最前線
【お役立ち研修】
















