
制度の現状認識と問題意識
介護保険制度は2000年の創設から25年が経過し、要介護高齢者の増加とともに利用者数・給付費ともに拡大し、日本の高齢社会を支える社会インフラとして定着してきた。
一方で、制度創設時に想定されていた社会構造と、現在、そしてこれから迎える社会構造との間には大きな乖離が生じている。
2025年を一つの節目として整備が進められてきた地域包括ケアシステムは、一定の基盤形成には至ったものの、今後は2040年を見据えた次の段階へ移行する必要がある。
人口減少と生産年齢人口の減少が急速に進む中で、85歳以上高齢者、認知症高齢者、独居高齢者が大幅に増加し、介護と医療の複合ニーズへの対応が制度全体の前提条件となっている。
特に、地域ごとに高齢化や人口減少の進み方が大きく異なり、これまでのような全国一律の制度運用では、サービスの維持・確保が困難になる地域が増えることが見込まれている。
こうした現状を踏まえ、介護保険制度全体について、将来を見据えた再設計が求められている。
介護人材と財政をめぐる深刻な状況
2040年に向けては、約57万人の介護職員確保が必要と推計されている一方、足元では介護職員数は減少に転じており、人材確保の見通しは極めて厳しい状況にある。
有効求人倍率は依然として高水準にあり、地域の介護サービスを支える人的基盤そのものが揺らいでいる。
また、介護給付費は制度創設時から約4倍に増加しており、今後も高齢者人口の増加や重度化の進展により、さらなる増加が見込まれる。
人材確保と財源確保の両面で制約が強まる中、制度の持続可能性をどのように確保するかは、避けて通れない論点となっている。
制度の基本的な考え方の再確認
こうした状況下において、介護保険制度の原点を改めて確認する必要がある。
介護保険制度は、高齢者が尊厳を保ち、可能な限り自立した生活を営むことを支える制度であり、その人らしい生活を地域で継続できるよう支援することを目的としている。
高齢者の自己決定を尊重し、必要な質の高いサービスを、希望する場所で受けられる社会の実現を目指すという基本理念は、2040年に向けても揺るがない柱である。
その上で、地域包括ケアシステムについては、市町村および都道府県が地域の自主性・主体性に基づき、地域の実情に即した形で構築・深化させていくことが重要とされている。
介護保険制度見直しに関する主な検討テーマ(4つの柱)
本見直しでは、以下の4つを主要な検討テーマとして整理している。
[1]人口減少・サービス需要の変化に応じた提供体制
地域の人口動態や高齢化の進行状況を踏まえ、「時間軸(将来変化)」と「地域軸(地域特性)」の両面から、柔軟なサービス提供体制を構築する必要がある。
特に中山間・人口減少地域への対応は重要な論点とされている。
[2]地域包括ケアシステムの深化
医療・介護連携の強化、認知症施策、相談支援体制の充実を図るとともに、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の役割整理、事業運営の透明性確保を進める。
また、身寄りのない高齢者への支援も含めた包括的支援体制の構築が求められる。
[3]介護人材確保・生産性向上・経営改善
人材確保とケアの質向上を両立させるため、生産性向上や協働化、経営改善支援を推進する。
地域の実情に応じて、自治体や関係者が連携した支援策を検討する必要がある。
[4]介護基盤整備と制度の持続可能性
2040年を見据えた介護保険事業(支援)計画の在り方を整理するとともに、負担能力に応じた負担や給付の適正化など、制度の持続可能性確保に向けた検討を行う。
【情報提供元】
社会保障審議会介護保険部会意見
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_68030.html
【お役立ち研修】














