地域の類型を踏まえた基本的な視点
2040年に向け、高齢者数はピークを迎える一方で、85歳以上高齢者が増加し、医療と介護の複合ニーズへの対応が不可欠となる。
同時に、生産年齢人口はほぼすべての地域で減少し、介護サービスを支える体制の維持が大きな課題となる。
高齢化や人口減少の進行速度は地域によって大きく異なり、サービス需要の変化も一様ではない。
そのため、将来変化を見据えた「時間軸」と、地域特性を踏まえた「地域軸」の両面から、提供体制を再構築する必要があると整理されている。
地域類型による整理
全国を以下の3類型に分け、地域の状況に応じた対応を検討する考え方が示されている。
•中山間・人口減少地域：高齢者人口・サービス需要が減少
•大都市部：高齢者人口が増加し、サービス需要が急増
•一般市等：高齢者人口が増減し、将来的に需要が減少へ転じる地域
人口構造の変化により、地域が将来的に別の類型へ移行する可能性があることも前提とされている。
都道府県・市町村は、介護保険事業（支援）計画を通じて、地域類型を意識したサービス基盤の維持・確保を担う役割が重要となる。
中山間・人口減少地域への対応
中山間・人口減少地域では、高齢者人口や介護需要が減少する一方で、人材不足や移動負担の増大により、「需要は減っているのに、サービスを維持できない」という矛盾が顕在化している。
このため、人員配置基準や運営ルールの柔軟化、出来高払いに依存しない包括的な報酬評価、市町村が関与する新たな事業スキームなどを組み合わせ、地域の実情に応じて介護サービスを「続けられる形」に再設計する方向性が示されている。
大都市部・一般市等における対応
大都市部における課題と対応の方向性
大都市部では、今後も高齢者人口、とりわけ後期高齢者人口の増加が続き、介護サービス需要が急増することが見込まれている。
一方で、住宅事情や人材流動性の高さ、事業所の集積と競争の激化といった都市特有の課題を抱えている。
特に、単身高齢者や高齢者のみ世帯の増加により、在宅生活を支えるための訪問系サービスや相談支援の重要性が一層高まる。
一方で、事業所間の競争が激しく、人材確保が困難な中で、過当競争による経営不安定化やサービスの質のばらつきが懸念されている。
このため、大都市部では、単にサービス量を増やすのではなく、地域ごとに必要な機能を整理し、医療・介護・住まい・生活支援が一体的に提供される体制づくりが求められる。
自治体が地域の実情を把握し、サービスの配置や役割分担を調整する機能を強化することが重要とされている。
一般市等における課題と対応の方向性
一般市等では、当面は高齢者人口が増加するものの、将来的には減少に転じる地域が多いと想定されている。
そのため、短期的な需要増への対応と、中長期的な需要減少を見据えた基盤整理の両立が課題となる。
需要がある時期に過剰な施設整備や人材投資を行った場合、将来的に経営の持続性が損なわれるリスクがある。一方で、対応が遅れれば、必要なサービスが不足し、地域生活の継続が困難になる。
このため、一般市等においては、将来推計を踏まえた計画的な基盤整備とともに、既存事業所の機能転換や多機能化、事業者間の連携を通じて、柔軟にサービス提供体制を調整できる仕組みが重要とされている。
定期巡回・夜間対応型訪問介護等の在り方と統合の方向性
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、在宅生活を支える中核的なサービスとして位置づけられているが、地域によっては利用が進まず、事業の継続が難しいケースも見られる。
特に、夜間対応型訪問介護との機能の重なりや、利用者・ケアマネジャーにとっての制度理解の難しさが指摘されている。
また、人材確保が困難な中で、複数の類似サービスを別々に維持することが現実的でない地域も少なくない。
こうした状況を踏まえ、定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護については、地域の実情に応じて柔軟に統合・運用できる仕組みを検討する方向性が示されている。
統合にあたっては、24時間対応という機能の本質を維持しつつ、運営の簡素化や人員配置の柔軟化を図ることで、事業者にとっても利用者にとっても分かりやすく、使いやすいサービス体系とすることが求められる。
また、自治体が地域の在宅ケアニーズを踏まえ、どのような形態が適しているかを判断し、計画的に位置づけていく役割の重要性も指摘されている。
【情報提供元】
社会保障審議会介護保険部会意見
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_68030.html
【お役立ち研修】
