2021年に障害者差別解消法が改正され、事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されました。
障害のある人もない人も、互いにその人らしさを認め合いながら共に生きる社会(共生社会)の実現に向け、どのような取組ができるか、考えていかなければなりません。
「不当な差別的取扱い」とは
障害のある人に対して、正当な理由なく、障害を理由として、サービスの提供を拒否することや、サービスの提供に当たって場所や時間帯を制限すること、障害のない人には付けない条件を付けることなどは禁止されています。
「合理的配慮の提供」とは
日常生活・社会生活において提供されている設備やサービス等については、障害のない人は簡単に利用できても、障害のある人にとっては利用が難しく、結果として障害のある人の活動などが制限されてしまう場合があります。
このような場合には、障害のある人の活動などを制限しているバリアを取り除く必要があります。
このため、障害者差別解消法では、行政機関等や事業者に対して、障害のある人に対する「合理的配慮」の提供を求めています。
具体的には、
行政機関等と事業者が、その事務・事業を行うに当たり、個々の場面で、障害者から「社会的なバリアを取り除いてほしい」旨の意思の表明があった場合にその実施に伴う負担が過重でないときに社会的なバリアを取り除くために必要かつ合理的な配慮を講ずること
とされています。
合理的配慮の提供に当たっては、障害のある人と事業者等との間の「建設的対話」を通じて相互理解を深め、共に対応案を検討していくことが重要です(建設的対話を一方的に拒むことは合理的配慮の提供義務違反となる可能性もあるため注意が必要です)。
※「合理的配慮の提供」に当たっては、障害のある人の性別、年齢、状態等に配慮するものとし、特に障害のある女性に対しては、障害に加えて女性であることも踏まえた配慮が求められることに留意する必要があります。
【合理的配慮の具体例】
物理的環境への配慮(例:肢体不自由)
例)飲食店で車椅子のまま着席したい。
→机に備え付けの椅子を片付けて、車椅子のまま着席できるスペースの確保
意思疎通への配慮(例:弱視難聴)
例)難聴のため筆談によるコミュニケーションを希望したが、弱視でもあるため細いペンや小さな文字では読みづらい。
→太いペンで大きな文字を書いて筆談を行う
ルール・慣行の柔軟な変更(例:学習障害)
例)文字の読み書きに時間がかかるため、セミナーへ参加中にホワイトボードを最後まで書き写すことができない。
→書き写す代わりに、デジタルカメラ、スマートフォン、タブレット型端末などで、ホワイトボードを撮影できることとした。
「合理的配慮」の留意事項
合理的配慮は、「事務・事業の目的」「内容」「機能」に照らし、以下の3つを満たすものであることに留意する必要があります。
(1)必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること
(2)障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること
(3)事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないこと
[合理的配慮の提供義務に違反しない例]
・飲食店において食事介助を求められた場合に、その飲食店は食事介助を事業の一環として行っていないことから、介助を断ること。(必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られることの観点)
・抽選販売を行っている限定商品について、抽選申込みの手続を行うことが難しいことを理由に、当該商品をあらかじめ別途確保しておくよう求められた場合に、対応を断ること(障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであることの観点)
※上記はあくまでも考え方の一例であり、実際には個別に判断する必要があります
過重な負担の判断
「過重な負担」の有無については、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要です。
(1)事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)
(2)実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
(3)費用・負担の程度
(4)事務・事業規模
(5)財政・財務状況
[合理的配慮の提供義務に違反しない例]
小売店において、混雑時に視覚障害のある人から店員に対し、店内を付き添って買い物を補助するよう求められた場合に、混雑時のため付添いはできないが、店員が買い物リストを書き留めて商品を準備することを提案すること。
※上記はあくまでも考え方の一例であり、実際には個別に判断する必要があります
NG対応
「前例がありません」
合理的配慮の提供は個別の状況に応じて柔軟に検討する必要があります。
前例がないことは断る理由になりません。
「特別扱いできません」
合理的配慮は障害のある人もない人も同じようにできる状況を整えることが目的であり、「特別扱い」ではありません。
「もし何かあったら…」
漠然としたリスクだけでは断る理由になりません。どのようなリスクが生じ、そのリスク低減のためにどのような対応ができるのか、具体的に検討する必要があります。
「○○障害のある人は…」
同じ障害でも程度などによって適切な配慮が異なりますので、ひとくくりにせず個別に検討する必要があります。
【障害者】
障害者差別解消法における「障害者」とは、障害者手帳を持っている人のことだけではありません。
身体障害のある人、知的障害のある人、精神障害のある人(発達障害や高次脳機能障害のある人も含まれます)、その他心や体のはたらきに障害(難病等に起因する障害も含まれます)がある人で、障害や社会の中にあるバリアによって、日常生活や社会生活に相当な制限を受けている人全てが対象です(障害のあるこどもも含まれます)。
【事業者】
障害者差別解消法における「事業者」とは、商業その他の事業を行う企業や団体、店舗であり、目的の営利・非営利、個人・法人の別を問わず、同じサービス等を反復継続する意思をもって行う者となります。
個人事業主やボランティア活動をするグループなども「事業者」に入ります。
教育、医療、福祉、公共交通等、日常生活及び社会生活全般に係る分野が広く対象となります。
事業者向けガイドライン(対応指針)について
事業を所管する国の行政機関は、事業者が適切に対応できるようにするために、不当な差別的取扱いや合理的配慮の具体例を盛り込んだ「対応指針」を定めることとされています。
事業者は「対応指針」を参考にして、障害者差別の解消に向けて自主的に取り組むことが期待されています。
事業者が法律に反する行為を繰り返し、自主的な改善を期待することが困難な場合等には、国の行政機関に報告を求められたり、助言、指導若しくは勧告をされる場合があります。
事業者の事業を所管する国の行政機関の作成した「対応指針」については、下記のサイトに掲載しています。
合理的配慮の具体例や業種ごとの留意事項等を確認する際には「対応指針」もあわせて参照しましょう。
内閣府HP(関係府省庁所管事業分野における対応指針)
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/taioshishin.html
相談窓口一覧
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/pdf/soudan/taiou_shishin.pdf
【情報提供元】
内閣府
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai_leaflet-r05.html