
2025年12月25日に開催された「第133回社会保障審議会介護保険部会」では、2040年を見据えた介護保険制度見直しに関する意見書案の最終的な取りまとめが行われました。
前回(12月22日開催)に続く議論の集約として示された今回の意見書では、「第10期介護保険事業計画(令和9年度~)までに何を決めるのか」という道筋が明確に示されています。
中でも注目されたのが、2割負担の対象となる「一定以上所得」「現役並み所得」の判断基準です。
意見書では、第10期開始前までに結論を得ることが適当と明記されました。
これは、判断を先送りし続けるのではなく、一定の期限を意識して整理していく姿勢が示されたものといえます。
一方で、利用者への影響を懸念する声も多く上がりました。
認知症の人と家族の会の和田委員は、2割負担となった場合、利用回数や時間を減らす人が4割に上るとの調査結果を紹介しました。
「生活費を切り詰める」「利用を控える」といった選択が、結果として心身の状態悪化につながらないか…こうした懸念は、介護現場にとっても決して対岸の火事ではありません。
制度の持続可能性を重視する立場からは、「能力に応じた負担」を年齢にかかわらず考える必要性も指摘されました。
現役世代の負担が増え続ける中で、制度全体のバランスをどのように取るのか。
利用者負担にとどまらず、保険料の在り方も含めた議論が、今後本格化していく見通しです。
また、所得や資産をどのように把握するかという点では、保険者事務の負担やプライバシーへの配慮が課題として挙げられました。
マイナンバー等を活用した仕組みづくりの必要性は示されたものの、実務面での調整はこれからとなりそうです。
有料老人ホーム入居者へのケアマネジメントの扱いについても、慎重な議論が続いています。
囲い込み防止やケアマネジャーの独立性をどのように担保するかは、今後の制度設計に委ねられています。
今回の意見書は、明確な結論を並べたものというよりも、「これから2年ほどかけて何を決めていくのか」を示した工程表に近い印象です。
第10期開始までの時間は、変化を先読みし、見据えて備えるための準備期間と捉えることができるでしょう。
介護保険制度は、2040年に向けて少しずつ形を変えようとしています。
その動きをどのように受け止めるかが、これからの現場運営と事業経営の双方に問われています。
【情報提供元】
第133回社会保障審議会介護保険部会
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67901.html
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