ご利用者Mさんのご家族から、「食事をした直後なのに、『まだ食べていない』と言うことが増えたんです」と相談を受けました。
ご家族が「さっき食べたばかりでしょ。おばあちゃんが『おなかいっぱい』と言って残した魚よ」とMさんが残した食事を見せても、「あなたの食べ残しでしょう。私は食べてない!」と怒り出すため、ご家族も困っているようです。
どうしてMさんは、「食べていない」と言うことが増えてきたのでしょうか?
Mさんの本当の気持ちを考えてみましょう。
「食べていない」と思う理由に着目する
一見、Mさんは食事をしたことを忘れているだけのように思えます。
しかし、食事が済んだことを思い出すヒントを見せても否定することに着目すると、解決のヒントが見えてきます。
「疾患」という視点
「食べた」記憶がない
中核症状の記憶障害により、「食べたこと」を覚え込めていないのかもしれません。
記憶は①新しく情報を覚える(記銘)→ ②覚えておく(保持)→ ③思い出す(想起)という3段階で成り立ちますが、認知症(特にアルツハイマー型の場合)になると①の力が低下します。
食べた記憶自体がなければ、ヒントを見ても、食事をしたことを思い出せません。
「人」という視点
訴えを聞き入れてもらえないと感じている
「食べていない」という訴えを頭ごなしに否定されたと感じ、分かってもらえないいら立ちが募っているのかもしれません。
ご利用者を否定せず、関心を引く提案をする
食事した記憶がないのに、訴えを聞き入れてもらえないことから不安や不満を感じているMさんの気持ちに寄り添いましょう。
納得してもらえるよう工夫することが大切です。
ご家族に「記憶障害」の説明をするとき、「もの忘れ」と表現することもありますが、「忘れた」のではなく、「覚え込めていない」ということを理解してもらいましょう。
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