[事例]
ある朝、ご利用者Kさんの娘さんからデイに電話が入りました。 「さっきから迎えを待ってるのに来ないじゃない!」といきなり怒鳴る娘さん。
驚いたスタッフは、とっさに壁の利用者一覧を見て「Kさん、今日は利用日ではありませんよね」と言いました。
すると娘さんは、さらに大きな声で「今日利用するって先週頼んだじゃない!」と怒り心頭です。
スタッフは「今調べます」と言って、利用者一覧を確認しましたが、Kさんの名前がないので「やはりKさんのお名前はありません」と答えました。
しかし娘さんが「何を言ってるの、先週お宅のスタッフに頼んだはずよ」と言うので、スタッフが「誰に頼んだのですか?」と尋ねたところ、娘さんは「もういい、頼まない」と電話を切ってしまいました。
後に、娘さんが臨時利用を依頼したのは送迎車の運転手で、それを運転手がスタッフに伝え忘れていたと分かり、このようなクレームにつながりました。
クレームの原因と再発防止の対応
対応のポイント
【1】クレームの電話を受けたら、まずは相手が直面しているトラブルに耳を傾け、相手の主張を否定しない
クレームの原因以上にスタッフの対応が問題
送迎車の運転手が、娘さんから臨時利用の依頼を受けていながら、それを他のスタッフに伝え忘れたことが、今回のクレームの原因です。
しかし、クレームをさらに大きなトラブルに発展させてしまったのは、スタッフの対応です。
Kさんの娘さんは、単刀直入で大変分かりやすく「時間になっても送迎車が来ない」と自分が直面している問題を訴えています。
ところが、電話を受けたスタッフは「この日はKさんの利用日ではない」と、クレームの原因が相手の落ち度であるかのような対応をしています。
娘さんは自分の主張が正しいと思っていますから、この時点では非がどちらにあるかよりも、娘さんのトラブルの解消に努めなければならないのです。
スタッフが娘さんの気持ちを察して、「それは申し訳ありません。送迎の車が来ないのですね。すぐに向かわせます」と答えていれば、娘さんは少し落ち着いてもうしばらく待ってくれたでしょう。
今回のスタッフの対応には、相手の立場で今起こっていることを想像する力が欠けていたのです。
【2】クレームの原因は、こちらのミスと仮定して、相手が直面しているトラブルの解消に全力を注ぐ
送迎車の運転手が原因のクレームは多い
次に娘さんは、臨時利用を「先週お宅のスタッフに頼んだはず」と言っています。
最近、デイの送迎車の運転手は、契約(嘱託)社員として運転業務だけで採用されることがあります。
お客様は長い時間かかわるスタッフと勘違いして運転手に重要な申し出をすることがあり、これを伝え忘れることでクレームにつながる場合が多いのです。
このような運転手を雇用しているデイサービスでは、運転手にノートを持たせてお客様の申し出を書き留めさせるなど、工夫して連絡ミスを防がなくてはなりません。
Kさんの娘さんは臨時利用を申し出たのですから、その日は用事で出かけようとしていたのかもしれません。
母親をデイサービスに預けて出かけようと急いでいるときに、頼りにしていたデイサービスの送迎車が来ないのですから、致命的なクレームになるのも当然と言えるでしょう。
【情報提供元】
月刊デイ
【ハラスメントなどのトラブル対応について学ぶ】