会長:妹尾弘幸の感想
2020年6月25日(木)に「第178回社会保障審議会介護給付費分科会」が開催されました。
新型コロナの影響でオンライン会議、議題も3回分をぎゅっと詰め込んで15時~18時過ぎまでの長丁場となりました。
お話ししたいことは山ほどあるので、それらを少し述べていきたいと思います。
あらかじめ断っておきますが、文章内容はあくまでも私の個人的かつ勝手な感想・考えであり、厚労省や公的会議で決まっていることでも何でもありませんのでそのつもりで読んでください。
会議では、ADL維持等加算などについて話が出ました。
個人的予想ですが…おそらく加算単価はアップすると感じていますが、今回それについて言及するわけではありません。
【言及ポイント】
(1)介護の質の評価のポイント
(2)進行性疾患で要介護度5、ADL全介助の人への介護には「介護の質」さえ存在しない !?
(3)本来は医療保険のリハビリで心身機能・ADLは最大限に改善されるべき!
(4)加算の性格・位置づけ 減算の性格、位置づけ
(5)エビデンスに基づいた介護とは
介護の質の評価のポイント
介護の質の評価では以下のことが大切だと思います。
・介護の質/リハの質って…そもそも介護の目的は何か、リハの目的は何か…
・加算の性格・位置づけ 減算の性格・位置づけ
・医療でのエビデンス(科学的裏付け)、介護でのエビデンス
・状態悪化の評価…「加齢、進行性の疾患」vs「事故、介護のミス」同じでいいの!?
・医療-介護の連携…転倒骨折で介護費用が減っても医療費が上がったらダメ
介護の目的は「尊厳の保持」「自立した日常生活が営める」であり老化に逆らってのADL(食事・排泄・入浴など)の維持・改善の数値ではありません。
介護の質を見るのであれば、どれくらい「目的」を達成しているか、「目的」の部分で効果を上げているかを見るべきだと思います。
「尊厳」とは何でしょうか。
全介助でも清潔でプライバシーが保たれて心地よいトイレと、自立でもカーテンの隙間から姿や匂い、音が漏れるトイレとどちらが尊厳保持の効果が高いのでしょうか?
そして「日常生活」とは生活を営むということであり、それはどんな生活なんでしょうかとでしょうか?老化に逆らってのパワリハやマシントレーニングだけをすればよいのでしょうか?
食事やトイレの介助量では「日常生活」の程度は図れないと思います。
ADLの変化で質を見るというのであれば、改善の見込みのない、進行性疾患で要介護度5、ADLが全介助の人への介護には「介護の質」さえ存在しないということなのでしょうか。
医療保険のリハビリで期間限定、集中的に充実したリハビリを提供し、その人の最大限の心身機能、ADL改善を達成するのが本来望まれる形です。
イコール医療と目的・本質の違う介護ではADLは改善しにくいということです。
それを同じ指標で評価とするのは望ましくありません。
加算の在り方
介護保険には各種加算があり、政策誘導の手段としても用いられていますが、本来制度の中の加算とはどうあるべきでしょうか?
私個人の考えですが…加算は、求められる目的でより高い結果・成果を出したことやより高い結果・成果を出そうとする体制、取り組みに対して実施されるものととらえています。
例えば、アセスメントや介護計画作成(多職種協議など)、利用者への説明…などはケアの流れで必ず必要な物であり、加算で評価するような性質ではないと思います。
上記は当然しなければならないことで、「していない場合」は減算するという考え方の方がよいと思います。
(従って、リハマネ加算Ⅰは基本報酬に含め、基本報酬を上げた上で、決められた手順を行っていない場合に、減算するという考え方になります)
根拠に基づいた介護は大切です。
医療のエビデンスではRCTといって個別性を除去する手段が良い評価を受けます。
介護は、個別性を大切にするサービスです。
個別性を大切にし、複雑系の日常生活を対象とする介護のエビデンスについては、医療とは異なる手法が必要ではないでしょうか?
(単純な筋力増強や関節可動域の改善などはRCTの量的研究でも良いと思いますが…)
今後、医療データと介護データの紐づけが進み、そのような解析が容易になっていきます。
介護事業所、姿施設のランク付け(事故・怪我、体調不良等の発生率に関するランク)も容易になっていくと思われます。
【PDF資料はこちらから】
■第178回社会保障審議会介護給付費分科会
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_12045.html
【もう少し深掘りした内容を読む】
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