活動は「一緒にできる」「ご利用者の自律につながる」ものを
デイサービスでの活動は「目的」と「目標」を明確にし、あくまでも「生活につながる」「どんな小さなことでも自律につながる」ような環境を考え、整えていかなければならないと思っています。
その上で、生活相談員として「メンバーさんに何をしてあげるか?」ではなく「メンバーさんと何をしていけるか?」、さらに「メンバーさんは何ができるか?やりたいのか?」といったことをしっかりとアセスメントし、「参加・活動」につながる計画を立てなければならないと考えます。
もちろん、介護保険上のサービスなので、ケアマネジャーの居宅計画書にも落とし込んでいただけるように、こちらからいろいろな提案をしています。
【事例】門松づくり~メンバーさんと稲から作り、地域の企業へ販売~
「門松創り」の目的は「手続き記憶の引き出し」「できることへの自信の維持」という認知症ケアの一環です。
この活動は、メンバーさんの 「昔は正月前には門松を創っていたんだよ。最近は見なくなったね」 の一声から始まりました。
毎年、メンバーさんと苗を植え、刈り取ったわらを縄編みにして門松を完成させます。
屋外作業なので地域の方にも興味を持っていただけました。
地域の方が「これなら売れるよ」と言ってくださったため、地域にある企業へ制作注文の依頼を試みました。
「デイサービスで作っている」とお話しすると、「認知症の方が作れるの?」と必ず言われるので、制作工程を写真で見て、理解していただくところから始めました。
発泡スチロールの田んぼづくり・田植え・収穫・脱穀・縄編み・完成という工程を写真で説明すると、興味を持っていただけ、門松の制作依頼へとつながりました。
地域の企業に完成した門松を納品する際の皆さんの充実した表情は、とても素晴らしいです。
納品した企業や店舗からは「門松を飾ると、それを見た地域の方から『珍しいじゃない』と声を掛けられ、『認知症の方の手作り』と伝えると一様に驚かれる」との報告もいただいています。
また、自事業所にも毎年飾っていますが、事業所の前を通る地域の方が写真を撮っていかれたり、メンバーさんに声を掛けていただいたりするきっかけになっています。
生活相談員はデイを「地域とつながるための活動の拠点」にするための黒子
このほかにも自事業所では地域の「ゴミ集積所の清掃」や業者から依頼をいただき「シュシュ作り」をクラフトの一環として行い納品しています。
最近では地域の子ども達と関わるための取り組みとして「駄菓子屋」も開始しました。
計算をメンバーさんにお願いしたり、将棋教室や竹おもちゃ教室の開催にも繋がっています。
これらの活動に共通しているのは、地域の人から「見える活動」という点です。
「見える」ことで、介護施設を利用している方でもいろいろなことができるのだと周囲に認識していただく「認知症の啓発活動」につながっています。
メンバーさんも「見える活動」を通して「まだまだできる」という体験や「近所の方から声を掛けていただける」という体験を経て、生活への自信につながり、その様子を見たご家族も安心でき、ご自宅でも室内に引きこもるのではなく、もう一度地域に出ていこうという意欲につながっていると感じています。
こうした意欲を引き出すために、介護施設は「居場所」ではなく「活動の拠点」となる必要があります。
そのために、生活相談員は企業や地域に働きかけるなど、さまざまな角度から調整をしていかなければなりません。
そのとき大切なのは、「活動・参加」に向けて「その方」の潜在している能力をいかにして気付き引き出せるか、そして「生活への自信」につなげるための黒子に徹し、メンバーさんの活動がすごいと認めていただくことだと私は思います。
【情報提供元】
■月刊デイ2017年2月号(一部抜粋)
■株式会社NGU 生活維持向上倶楽部「扉」
【自立と自律の支援について学びたい方はこちらから】
■認知症の方の生活機能改善に必要な知識と技術セミナー
https://www.tsuusho.com/dementia_reha/