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不可抗力の事故

2024.08.29

介助中の転倒で利用者は骨折、職員の顔面にはアザが…。
デイは「不可抗力の事故で過失はない」と主張するが…

認知症の利用者Uさん(71歳、男性)は、左半身麻痺で車イスを利用しており、時々介護を拒否されることがあります。

ある日、女性職員がUさんをトイレに誘導して便座に移乗しようとして抱え上げたところ、Uさんは「痛い!」と言って、突然大きく腕を振り上げました。

Uさんの肘は職員の左目の下に命中し、よろけた職員はUさんを転倒させてしまいました。

Uさんは大腿骨の骨折で入院となり、職員も顔面に大きなアザができてしまいました。

事故状況について、主任のミチコさんがキーパーソンの娘さんに「職員も顔面にけがをするほどの力でしたので、お父様の事故を防ぐことは難しかったのです」と説明しました。

娘さんは「職員にけがをさせるような腕力が父にあるとは思えない」と不満を漏らしましたが、それ以上デイサービスの責任を追及しようとはしませんでした。

ところが、翌月にUさんが入院先の病院で肺炎を併発して亡くなると、娘さんは「職員が介助中に父を転倒骨折させたのに、デイサービスは責任を取ろうとしなかった」と市に苦情を申し立てました。

デイサービスは事故報告書を添えて「職員もけがをしており、事故は不可抗力である」と回答しましたが、市から職員の診断書の提出を求められました。

職員がけがの受診をしていなかったため診断書を提出できず、最終的に過失を認めて損害を賠償することになってしまいました。


デイサービスに過失はあるか?

まず、本事例の事故の過失の有無について検証してみましょう。

顔面に肘打ちを受ければ、誰でも利用者を支える手を放してしまうことは避けられないでしょう。

ですから、デイサービスの主張が事実であれば、この事故は不可抗力で過失はありません。

しかし、家族は「父にはそんな力はない」と主張していますから、Uさんの肘が職員の顔に当たったときの衝撃の強さを、家族に納得させなければなりません。

苦情申し立てを受けた市がデイサービスに対して診断書の提出を求めてきたのは、このような理由からです。

また、移乗介助中にUさんは「痛い!」と言って腕を振り上げていますから、職員の移乗介助の方法が不適切だったことが事故の原因とも考えられます。

当然、職員の移乗介助の方法が安全だったのかを検証しなければなりません。

このように、不可抗力の事故で無過失であると主張するためには、納得してもらえる説明ができなければなりません。

本事例のような事故では、デイサービスの無過失の主張は認められるのでしょうか?


安全配慮義務を尽くしていたか?

見守りなどの間接的な介助と異なり、利用者の身体動作を直接介助しているときに発生した事故では、無過失を主張することが難しいと考えられています。

なぜなら、職員には利用者の身体動作がすべて委ねられており、その介助に対して極めて高い注意義務が課せられているからです。

身体介助中の事故で無過失を主張しようとすれば、「安全配慮義務を尽くしたにもかかわらず、防ぐことが困難であった」と納得してもらえる事由をきちんと説明できなければなりません。

本事例では職員が顔面に強い打撲を負っているため、転倒を防ぐことが困難であったという事由があります。

しかし、家族は事故の説明を口頭で受けただけで、職員の顔面のけがを見ていませんし、職員は受診していないため診断書を取得することもできません。

当然、この事故で家族と争いになれば、家族の「父には職員にけがを負わせるような腕力はない」という主張を覆すことが難しくなります。

ですから、本事例の事故では「不可抗力による事故で無過失である」という主張は認められないかもしれません。


【情報提供元】

月刊デイ

https://daybook.jp/day.html

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