【1】運営主体が異なる介護サービス事業所等の利用者の同乗に係る取扱い
介護職員の必要数は、高齢化社会の進展に伴い増加が見込まれており、送迎業務についても可能な限り効率的に実施し、介護職員の負担を軽減していくことが求められているところ、特に、交通事業者への送迎業務の委託が困難な地域において、運営主体が異なる介護サービス事業所等の送迎を共同で行うことが効果的な方策の一つと考えられる。
そこで、運営主体が異なる介護サービス事業所等の送迎の共同化を促進するために、「令和6年介護報酬改定に関するQ&A(vol.1)(令和6年3月15日)」(以下「介護報酬改定Q&A」という。)問66及び問67並びに「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.6(令和6年10月11日)」(以下「障害福祉サービス等報酬Q&A」という。)問1及び問2において、以下の条件を満たす場合には、介護サービス事業所等の送迎車両に他法人の介護サービス事業所等の利用者が同乗しても、介護報酬及び障害福祉サービス等報酬の支給対象となり、介護報酬については送迎減算が適用されないこと、障害福祉サービス等報酬については送迎加算の対象となることが明確化されたところである。
(条件)
・必要な雇用契約又は委託契約を結んだ上で、事業所間で、同乗にかかる条件(費用負担や責任の所在等)を協議した上で決定していること
・送迎範囲が利用者の利便性を損なうことのない範囲であり、かつ、各事業所の通常の事業実施範囲内であること
【2】介護サービス事業所等と居住実態がある場所との送迎に係る取扱い
介護サービス事業所等による送迎については、利用者の居宅と事業所間の送迎を原則とするものであるが、生活実態が多様化している昨今の状況を踏まえると、利用者の自宅と事業所間以外の送迎に関するニーズも存在しうる。
そこで、当該ニーズに対応し、介護サービス事業所等の送迎サービスを有効活用するために、介護報酬改定Q&A問65において、以下の条件を満たす場合には、利用者の居住実態のある場所(親族の家等)と事業所間の送迎についても、介護報酬の支給対象となり、送迎減算が適用されないことが明確化されたところである。
(※障害福祉サービスに係る給付の支給対象となり、送迎加算の対象となることについては、「平成27年度障害福祉サービス等報酬改定に関するQ&A(平成27年3月31日)」問2において明確化されている。)
(条件)
・事業所のサービス提供範囲内である等、運営上支障がないこと
・利用者と利用者家族それぞれの同意が得られていること
【3】介護サービス事業所等の車両の空き時間活用に係る取扱い
地域の介護サービス事業所等の送迎車両及びドライバーは、特に交通事業者によるサービス提供が不足している地域において有効な輸送資源となる場合があるところ、当該車両及びドライバーの空き時間を活用して地域住民等を送迎する取組は、介護サービス事業所等の利用者の送迎が行われない時間及び利用に支障がない範囲で行われる場合には、介護報酬及び障害福祉サービス等報酬に影響なく実施可能である。
但し、あくまでも車両の空き時間を利用することとしたもので、地域住民と介護サービス事業所等の利用者との同乗を可とするものではないため、留意されたい。
例えば、通所介護事業所等や生活介護サービスを提供する複数の社会福祉法人が共同して、送迎車両及びドライバーの空き時間を活用し、高齢者の外出支援サービスの一環で、スーパーやコミュニティセンター等を結ぶ定時定路線の無償送迎サービスを、地域における公益的な取組として実施している事例が存在する。
なお、送迎サービスの提供にあたり利用者より実費(燃料代、道路通行料、駐車場料金、保険料及びレンタカー代)を超えて対価を受領する場合には、道路運送法(昭和26年法律第 183号)の許可又は登録が必要となるため、留意されたい。
【4】介護サービス事業所等による送迎の委託に係る取扱い
介護サービス事業所等の送迎業務の効率的な実施に向けた方策として、交通事業者への業務委託も効果的である。
送迎業務自体を委託することで、介護サービス事業所等の負担軽減だけでなく、交通事業者における収益増加に寄与し、ひいては地域の移動手段の確保に資することが期待できる。
そこで、送迎業務の交通事業者への委託を促進するために、介護報酬改定Q&A問67並びに障害福祉サービス等報酬Q&A問1及び問2において、以下の条件を満たす場合には、介護サービス事業所等が単独で交通事業者に委託することに加え、運営法人が同一であるか否かに関わらず、複数の介護サービス事業所等が共同で、それぞれの送迎業務を一括して交通事業者へ委託しても、介護報酬及び障害福祉サービス等報酬の支給対象となり、介護報酬については送迎減算が適用されないこと、障害福祉サービス等報酬については送迎加算の対象となることが明確化されたところである。
併せて、共同で委託する場合においても、以下の条件を満たす場合には、介護サービス事業所等の送迎車両に他法人の介護サービス事業所等の利用者が同乗しても、介護報酬及び障害福祉サービス等報酬の支給対象となることも明確化されたところである。
(条件)
・事業所間で、同乗にかかる条件(費用負担や責任の所在等)を協議した上で決定していること
・送迎範囲が利用者の利便性を損なうことのない範囲であり、かつ、各事業所の通常の事業実施範囲内であること
※なお、介護サービス事業所等の送迎業務を交通事業者に委託する場合の委託費用に関する道路運送法の取扱いについては、別表1を参照されたい。
【5】総合事業における通所型サービス等の送迎の委託に係る取扱い
介護予防・日常生活支援総合事業(以下「総合事業」という。)の指定相当通所型サービスにおける送迎に関し、多様な主体の参入を促進するため、「「介護保険法施行規則第140条の63の2第1項第1号に規定する厚生労働大臣が定める基準の制定に伴う実施上の留意事項について」の一部改正について」(令和6年3月15日老認発0315第5号厚生労働省老健局認知症施策・地域介護推進課長通知)により、以下について明確化されたところである。
・指定相当通所型サービス事業所への利用者の送迎について、外部委託を行うことが可能であること
・総合事業の実施主体としての市町村が、地域全体で高齢者の移動手段を確保するという視点に立ち、当該送迎業務を地域の公共交通事業者等(社会福祉協議会、NPO法人、農業協同組合、労働者協同組合、法人格を有する地域運営組織等を含む)に委託することや、地域住民の互助による移動支援に対して補助する等、様々な形で実施することも可能であることまた、「介護予防・日常生活支援総合事業による高齢者の移動支援に係る交通施策との関係等について(周知)」(令和6年3月 29 日厚生労働省老健局認知症施策・地域介護推進課事務連絡)において、指定相当通所型サービス以外の通所型サービスにおける送迎についても、指定相当通所型サービスの内容を踏まえて市町村が定める基準等に従って柔軟に実施することが可能である旨が明確化されたところである。
【6】介護保険法等に基づく移動支援等に係る道路運送法の取扱い
介護保険法(平成9年法律第123号)や障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)に基づく移動支援等については、「道路運送法における許可又は登録を要しない運送に関するガイドライン」(令和6年3月1日国自旅第 359号)において、法制度上、運送サービスに対する報酬が支払われていないと扱われるもの(以下具体例参照)は、有償の運送に該当せず、道路運送法上の許可又は登録は不要であると整理された。
【具体例】
(1)訪問介護等における運送
・乗降介助が介護報酬の対象となっている場合でも運送は介護報酬の対象外であり、利用者から運送の反対給付として金銭を収受しない場合は許可又は登録は不要。
障害者総合支援法に基づく居宅介護、行動援護、同行援護、重度訪問介護、重度障害者等包括支援及び地域生活支援事業の移動支援事業において運送を行うことがある場合についても同様。
(2)総合事業における訪問型サービスB・D及び一般介護予防事業の一環として行う運送
・当該運送に特定した反対給付がない場合
・地域支援事業交付金等から補助されるガソリン代等の実費並びにボランティア(運送を行う者を含む。)に対するボランティアポイント及びボランティア奨励金のみを収受する場合
【7】交通部局と介護保険・障害福祉部局との連携・協働推進
介護サービス事業所等の送迎を検討する際には、利用者の利便を確保しつつ、地域全体で効率的な輸送体系を構築する観点から、地域公共交通、要介護者等の利用者の移動環境、地方公共団体の総合的なコスト等を勘案して検討する必要がある。
このため、交通部局及び介護保険・障害福祉部局の両部局が、介護サービス事業所等の送迎車両や地域公共交通に係る制度・予算等の内容、これらの運用に関する情報を相互に共有する等、平時より連携を推進するとともに、介護サービス事業所等の送迎業務と地域交通の運用を一体的に検討する際には、地域公共交通会議等を活用し、十分な調整を行うようお願いする。
【情報提供元】
[通知]介護サービス事業所・障害福祉サービス事業所の送迎業務の効率化及び地域交通との連携について
https://www.roken.or.jp/wp/wp-content/uploads/2024/10/1011_1.pdf