リハビリ施設やリハ職が働きながら課題としているのは、「いかに利用者に自主的に運動してもらうか」ということです。
運動を提案してはみるものの、なかなか実施してもらえないことも多くあります。
そのとき、「意欲が低い」という理由で自主トレーニングなどを断念する場合もあります。
リハージュVol.1に掲載されていた「運動のきっかけ」をつくるポイントをご紹介します。
運動のきっかけをつくるポイント
(1)運動できる状態かを確認する
意欲が低いと思える利用者には、さまざまな背景が潜んでいます。
例えば、便が出なくてしんどい、夜眠れない、ご飯がおいしくないなどです。
(2)その方の好みを知る
例えば「膝を伸ばす運動をしてほしい」と考えたときに、機械や道具を使ったほうがいいのか、集団がいいのか、一人がいいのか、家族と一緒がよいのかなど、その方に合わせた好みを特定することが大切です。
(3)環境を設定する
自分の部屋やフロアで、一人で運動してもらうには限度があり、積極的に運動していただくには、環境づくりが重要になります。
ポイントは、「同じように運動をしている人が周りにいる」「すぐ相談できる専門家がいる」などです。
自主的に運動ができる環境設定やかかわり方の例
ご利用者の抱える問題を把握し「運動に向き合える状態」を整える
ある利用者はリハビリへの意欲が低く、いつも活気がなく、つらそうでした。
介護職の聞き取りで、「夜に何回もトイレに行って眠れていない」ことが分かったため、医師や看護師と相談し、薬を処方してもらいました。
すると、夜の頻回のトイレが減少し、リハビリへの意欲が上がりました。
→リハビリや運動に対して意欲が低い原因は、プログラム内容だけではありません。施設に入所されている方はさまざまな問題を抱えています。その原因に対して、医師、看護師、介護職、ケアマネジャーなどと相談し、「運動に向き合える状態」にすることが先決です。
習慣化している生活動作を運動に取り入れる
ある利用者に、立位がしっかり安定するように踵上げのトレーニングを提案しましたが、「必要ない」と断られてしまいました。
ご家族に生活背景を聞き取りしたところ、洗濯をまめにする几帳面な方ということが分かりました。
そこで、リハ室の洗濯物をハンガーに干してもらうプログラムに変更したところ、意欲を持たれ、自然と立位動作を取り入れた運動が実施できました。
→提案した運動を拒否または、自主トレーニングしてくれな い利用者の方には、生活背景を取り入れた練習にするのも1つの手です。セラピストが運動の目的を明確にしておけば、練習内容を組み立てやすくなります。立位を安定させるため にふくらはぎの筋力強化をしたいという目的があれば、あとは運動のきっかけを考えます。習慣となっている生活動作を運動に取り入れることも意欲の向上のきっかけになります。
自由に運動できる自主トレスペースを設置!仲間がいる環境が運動の動機に
リハ室の一角を自主トレスペースとして開放し、必要な道具をそろえて、自由に運動ができる環境を設定しました。
それまでは個々に自主トレを提案しても、なかなか実施していただけませんでしたが、同じように運動する仲間がいるという環境を設けることで、多くの方に活用していただけるようになりました。
→自主トレスペースをつくることで、周りの利用者に触発されて運動をしていただけることがあります。中には、利用者が別の利用者を励まして運動に誘導してくれる場合もあります。また、リハ室の一角にあるため、適宜セラピストからの指導がもらえる点もリハ室を有効活用する利点です。
仲の良い人と一緒に運動できるよう配慮する
ある男性利用者は、リハ室には来るもののほとんど運動されていませんでした。
運動の内容を簡単なものに変更したりゲームを取り入れたりしましたが、参加には消極的でした。
しかし、フロアではほかの利用者と仲良く話す姿は見られていたため、よく話をされている女性利用者と一緒に運動していただくようにしたところ、運動を継続していただけるようになりました。
→リハビリに消極的な方でも、ある特定の人と一緒なら 実施していただけることがあります。拒否をされる方の中には、仲の良い方に隣で運動してもらう、同じ内容の自主トレーニングを設定するといった方法で意欲が上がるきっかけになる場合もあります。
【情報提供元】
■リハージュvol.1(一部抜粋)
https://dayshop.biz/products/list?category_id=114
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