“ご利用者主体”=“効率のよいケア”を浸透させることが鍵
限られたスタッフ数で多数の利用者を同時にケアしなければならない状況は、全国多数の介護現場に当てはまる状況でしょう。
特定のご利用者へかかわれる人的・時間的コストは限られており、その限界を超えたときに転倒などの事故が発生します。
そして大抵の場合、限りあるコストを効率よく多数の利用者に分配できるように策を練ることとなりますが、リハビリ職を配置している事業所でのリハビリ職の役割がここにあります。
ここでいう「効率よく」とは、スタッフ側の都合をご利用者に押し付けた「スタッフ主体」のケアをするという意味ではなく、ご利用者の視点に立った「ご利用者主体」のケアが、認知症の方にとって安心感と居場所を感じる機会となり、BPSD発症を防ぎ、結果的にコストをいかに最小化できるかという意味です。
リハビリ職はその糸口を認知症の方や家族、スタッフから探り、対策のアイデアを提案する役割を担っています。
例えばICFのどのカテゴリの因子が強く影響し、現在の言動として表出しているかを総合的に評価し、かかわることができます。
特に認知症の方の場合、見当した今と、実際の状況が大きく乖離していることがあるため、因子の関係性を意識したかかわりが大切です。
その繰り返しがかかわりの精度を向上させ、主体性を尊重した対策へとつながっていきます。
その方が過去のどの経験から今を見当しているのかを評価し、その方が見当している今を尊重することで、共感を伴ったかかわりを持つことが必要になります。
「ご主体のケアが、結果的に限られたスタッフ数による転倒予防策に通じる」を実践するためには、その方への理解をより総合的なものとすることが求められます。
ICFの観点を用いて、どの因子同士が強く影響し合っているかを整理することで、その方が表出する言動の意味を推測し、よりその方の視点に立ったケアの提供と転倒予防策を立てることができます。
「利用者の自立と自己実現のためには、その方と家族のおもいを柱としたチーム支援が必要」であり、転倒予防においても同じです。
その方の背景を知らずに誰にでも当てはまる対策はなく、その方にとっての今を知り、目線を合わせ心通わせるかかわりなしに対策を立てることはできません。
私たちの役割は、家族それを伝え、その方が主体性を持って過ごせるよう一緒になって考えるところにあります。
【1】健康状態
■その方の視点に立ったケアと転倒予防策へつなげる思考
(例)
・その方が抱えている疾患や障害により生じる可能性のあるリスクとは何だろうか
・それについて、どのような準備と支援ができるだろうか
【2】生活機能と障害
[1]心身機能・身体構造
■その方の視点に立ったケアと転倒予防策へつなげる思考
(例)
・その方が今をどのように見当しているのだろうか
・その方と気持ちを共有していることを、どうすれば伝えることができるだろうか
[2]活動
■その方の視点に立ったケアと転倒予防策へつなげる思考
(例)
・どのADLのどの動作で転倒リスクが発生するだろうか
・その際、どのような支援を要するのだろうか
[3]参加
■その方の視点に立ったケアと転倒予防策へつなげる思考
(例)
・その方主体でいられ、安心感と居場所を感じながら過ごせる活動とは何だろうか
・その際、どのような支援を要するのだろうか
【3】背景因子
[1]環境因子
■その方の視点に立ったケアと転倒予防策へつなげる思考
(例)
・かつてその方が経験したどの環境(家庭、近所付き合い、学校、職場、サークル、介護サービスなど)で、どのような役割を持って過ごしていたのだろうか
・その方が主体的でいるためには、どのようにかかわれば良いだろうか。
どのような役割を果たすことで、安心感と居場所を感じながら過ごせるよう支援できるだろうか
[2]個人因子
■その方の視点に立ったケアと転倒予防策へつなげる思考
(例)
・その方の性格や生い立ち、趣向はどうだろうか
・その方が主体的でいるためには、どのようにかかわれば良いだろうか。
どのような役割を果たすことで、安心感と居場所を感じながら過ごせるよう支援できるだろうか
【情報提供元】
リハージュ
【お役立ち研修】
医療・介護の現場で活かせる実践的リハビリ評価&介入セミナー
第23回日本通所ケア研究大会
https://tsuusho.com/conference/