コミュニケーションは、「認知期」「伝達期」「発展期」「要約・確認期」とそれぞれの局面(フェーズ)をこなすことで成立します。
各コミュニケーション・フェーズがスムーズに進むほど、私たちは良好なコミュニケーションができていると感じます。
逆に、どこかのフェーズで問題が起こると、コミュニケーションに障害が出てきます。
コミュニケーションを取るためには、まず対象者にこちらを認識してもらう必要があります。
認知症の方の場合、その進行の程度により、時間、場所、人の見当識が低下していきます。
見当識障害がある場合、自分がどこに存在しているのかはっきりと認識できないため、精神的に不安定となって、自己の存在が確認できる過去や未来へと検索の幅を拡げます。
この時、外界から受ける視覚的・聴覚的・触覚的刺激などは限りなく抑制され、記憶の振り返りや合理的思考に注意・集中した状態となります。
このため、通常以上の刺激量でなければ、外界に対して意識を向けることが難しくなってしまいます。
どこか遠くを見るようにボーッとしているように見える方、同じ姿勢のまま傾眠傾向にある方は特にコミュニケーションにおける「認知期」に不安や不満などの悪影響が出やすいので、「不安を与えない他者認識」でご本人にアクセスすることが大切です。
■見当識
【時間の見当識】
(説明)今がいつなのか
(例)季節、年、月、日、週、曜日、午前・午後、時間、分、秒
【場所の見当識】
(説明)ここがどこなのか
(例)過去に住んでいた実家、現在地、施設、病院 など
【人の見当識】
(説明)この人が誰なのか
(例)家族、親友、知り合い(施設職員)、初対面の人 など
■不安を与えない他者認識
不信感や緊張感を与えないように、少し離れた前方(7~10m先)からこちらの存在を示し、徐々に距離を縮めていきます。
【安心感を与える距離別コミュニケーション】
●遠距離(7~10m)
(伝達方法)周囲の方と挨拶を交わす
(説明)対象となる相手にまっすぐたどり着くのではなく、対象者の周囲の方に挨拶をしながら、少しづつ距離を詰めていくことで、お互いに自然なコミュニケーションを行う準備ができる。
●中距離(5~7m)
(伝達方法)大きく会釈する
(説明)対象となる相手が、こちらの存在を認識した(気付いた)その瞬間に合わせ、大きく頭を下げて会釈することで、こちらも相手の存在をはっきりと認識したということを伝える。
(伝達方法)大きく手を振る
(説明)対象となる相手が、さらにこちらを認識できるように、大きくゆっくりと手を振ることで、動きに対する視覚的認識を高め、相手の注意をこちらに向ける。
●公衆距離(3.6m以上)
(伝達方法)微笑んで目を合わせる
(説明)双方がお互いの存在を認識した後、こちらの存在を認識してくれた(気付いてくれた)ことへの感謝を表すように微笑み、目を合わせて対象者との距離を縮めていく。
●社会的距離(1.2m~3.6m)
(伝達方法)ゆっくりとした受け入れのポーズ
(説明)軽く手を振ったり、軽く両手を広げて迎えに行ったり、少し体を前方に傾けて相手を迎え入れる姿勢を見せる。相手にとってこちらが無害であることを全身で表現する。
●個人的距離(0.45m~1.2m)
(伝達方法)丁寧な挨拶を交わす
(説明)相手と目線を合わせて、柔和な雰囲気の中でゆっくりと挨拶を交わし、安らぎの時間を共有する。
●密接距離(0.15m~0.45m)
(伝達方法)相手の体の一部に接する
(説明)相手の手を下から支えるようにこちらの手を差し出し、相手がそれを受け入れた時のみ包み込むように握り、相手の体温を感じる。
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https://www.tsuusho.com/online_dementiareha
【情報提供元】
■認知症ケア最前線vol.56(一部抜粋)
■川畑 智氏(株式会社Re学 代表取締役/理学療法士)
認知症の理解を深め、好ましい認知症ケアの実践につなげていく「ブレインマネージャー」