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第182回社会保障審議会介護給付費分科会を傍聴して

2020.08.20

会長:妹尾弘幸の報告

2020年8月19日(水)に「第182回社会保障審議会介護給付費分科会」(WEB会議)が開催されました。

今回は、グループホーム協会やサービス付き高齢者住宅、有料老人ホーム関係の協会などのヒアリングに加えて訪問介護、訪問入浴、訪問看護、訪問リハ、居宅療養指導、居宅介護支援についての議論が行われました。

※あらかじめ断っておきますが、文章内容はあくまでも私の個人的かつ勝手な感想・考えでありますのでそのつもりで読んでいただければ幸いです。


訪問介護についての主な議論点

(1)介護報酬のアップについて

→基本報酬のアップが必要、看取り加算の新設

(2)多訪問回数者のケアプランチェックについて

→不要ではないか

(3)生活援助従事者研修の実態について

→修了者数、就業状況について知りたい

→平成30年に創設されたばかりなので資料がないとのこと

(4)サービス提供責任者(サ責)の業務について

→業務が多く大変

(5)デイサース職員の訪問介護の恒久化について

→賛否両論あり

(6)目的地間の移送における通院など乗降介助の保険適用の拡大について

→適用拡大を望む


会長:妹尾弘幸の視点

訪問介護事業所は、平成29年(33,445事業所)、平成30年(33,284事業所)、平成31年(33,176事業所)と年々減少しており、8割以上の事業所が人手不足感を訴え、また求人倍率も15倍を超えるなど訪問介護における職員確保はとても難しくなっています。

既に訪問介護のサービス提供が困難となっている地域も出てきており、このままでは全国各地で訪問介護難民が多発することが予想されます。

そのため、訪問介護の救済を求める意見が多く出ました。

今までは、デイサービスと並んで介護報酬抑制の標的となることが多かった訪問介護ですが、訪問介護の崩壊が目の前に迫っている現実が知られてきたことで、大きく風向きが変わろうとしています。

例えば、「訪問介護員への評価アップ」「訪問介護員の名称変更」「サービス提供責任者(サ責)の処遇改善」など訪問介護への改善要望に関する活発な意見が多く出ました。

また、訪問回数の多い利用者へのケア会議でのケアプランチェックについても制度を見直す要望が複数出ました。

新型コロナウイルス感染症による特例措置として行われた通所介護の職員の訪問については、「今後も可能とすべき」という意見や「訪問介護と通所介護は目的が違う」「訪問介護員の専門性(養成課程修了など)の意義が問われる」という継続には否定的な意見の両方が出ました。


複合型通所介護(仮称)新設か!?

今後介護での最大の課題の1つは、訪問介護の崩壊をいかに防ぐかです。

そのためには訪問介護に対してはの規制はできるだけ緩やか(多回数利用者のケアプランチェックの廃止、目的地間移送の保険適用拡大など)にし、訪問介護員の処遇改善(訪問介護マネジメント加算、看取り加算の新設など]が行われるのではないかと考えられます。

しかし、それだけでは従事者不足を補うことが不可能なため、通所介護職員の訪問介護を可能とするという法整備があるかもしれません。

これについては、私が10年以上前から提唱している【複合型通所介護(仮称)】(通所+訪問の包括報酬)新設も現実味を帯びてくるのではないでしょうか。


訪問入浴について

訪問入浴では「部分浴」「清拭」の30%減算について、減算率が軽減されるのではないかと予想されます。


訪問看護・訪問リハについて

訪問看護は、平成29年(10,689事業所)、平成30年(11,164事業所)、平成31年(11,795事業所)と年々増加していますが、事業所数は西高東低となっており、滋賀県を境に高齢者1,000人当たりの事業所数が西は0.4程度、東は0.3程度となっています。

訪問看護では、退院当日の訪問看護が認められていませんが、体調変化など緊急時においては認められるようになるのではないかと感じました。

訪問看護の議論は少なかったのですが、訪問看護ステーションからリハ職による訪問業務については、前回改定同様に大きな逆風が吹いていました。

訪問看護ステーションにおけるリハ職の割合によって「報酬単価に差が付けられる」または「リハ職による訪問の単価が准看護師同様に90%に下げられる」という可能性があると感じました。

訪問リハについては前回改定で専任医師の配置が決まり、リハ職のみでの開設が出来なくなりました。

訪問リハにおける期間を定めた「卒業」が出来ない理由として「利用者・家族がリハビリの継続を求める」という理由が、社会参加支援加算の算定有無に関らず最も多く、半数以上を占めています。

また生活機能維持のためには訪問リハの継続が必要な場合も多いという意見が出ました。

「リハビリテーション」と「機能訓練」の違いについて昔、私が老健局老人保健課の課長に聞いた際には「リハビリテーションは医療であり、機能訓練のうち医師の指示が必要な機能訓練のことです」と言われました。

介護分野のリハビリテーションについては、総合的(医療面でのリハビリを含む)に考えて「リハビリとは何か」「必要な人に必要なリハビリ提供の維持をどうするか」などについて考える必要があるのではないかと考えます。


(考える必要性があると思われる事項)

・「リハビリテーションの何に対して医師の指示が必要なのか」

・「リハビリテーション、リハ職が提供する機能訓練、機能訓練指導員が提供する機能訓練、その他の職員が提供する機能訓練…それぞれの違い」

・「通所リハ、訪問リハで提供するリハビリと通所リハ、訪問リハで提供する機能訓練(医師の指示までは不要な機能訓練)の違い」

・「リハビリテーションの本来の目的」

・「利用者・家族への正しいリハビリテーションの理解促進(リハビリ=身体訓練ではない)」

・「近い将来のリハビリ難民(訪問・通所リハビリがない地域)への対応」など


上記については、「要介護者等に対するリハビリテーションサービス提供体制に関する検討会」が開設されており、今回は介護計画(ケアプラン)に載せる指標についての議論だったため、引き続きて議論されることが望まれます。

※実際に令和2年7月14日の報告書では、『…略…これらを含めたリハビリテーションサービス提供体制の構築については今後検討していくことが求められる』とされています。


居宅介護支援について

ケアマネジャーは平成28年から平成29年にかけて2,000人増えています。

一方、要介護認定者は110,000人増加しています。(要介護のみだと105,000人)

例えば、1人のケアマネジャーが要介護のみの利用者を32人受け持つとすると3,281人のケアマネジャーが必要となる計算です。

介護支援専門員試験の合格者の合格率も年々鈍化していますので、今後はケアマネジャー不足・ケアプラン難民が急増するのではないかということが予測されます。

分科会で批判対象となりやすいケアマネジャーですが、今回は「ケアマネジャー不足」「ケアプラン難民の急増」が予測されるためか「報酬改善」「待遇改善」の論調が主となり、次回改定は報酬アップになるのではないかと思われました。

同時に地域包括支援センターの業務多忙に伴う、予防プランの委託促進のために介護予防の報酬もアップされるのではないでしょうか。

ただし、前述のように要介護者のみでも足りないケアマネマネジャーに対して、予防プランまで委託するとよりケアプラン難民が発生するリスクは高まります。

解決策の一つとして、1人のケアマネが担当する担当利用者数の増加(基準緩和:多ケアプランの減算)が考えられます。

また「突発的対応についての業務負担が大きい」との調査結果もあり、緊急時対応加算のようなものが設けられるのではないでしょうか。

いずれにしても、居宅介護支援に関する報酬改定は厳しい内容になることはないのではないでしょうか。


まとめ

人材不足が続く介護業界ですが、本格的に「訪問介護難民」「ケアプラン難民」が各地で発生しだしました。

今後はより急激に増加すると思われ、早急な対応が必要だと考えます。

また、訪問介護に関しては、「訪問における機能訓練(生活機能の訓練)の視点」が必要と思います。

機能訓練指導員などの資格者のほか、一定の知識・技術がある介護福祉士も既存の生活機能向上連携加算の算定対象とするべきではないでしょうか。

それは、介護福祉士の専門性や魅力の向上にもつながると思います。

上記と共に通所介護+訪問介護の「複合型通所介護(仮称)」を創設することで、デイで実施している機能訓練を自宅の実践的環境下で訓練する、自宅での課題をデイの訓練に反映するなど有機的な連携で効果を上げられると思います。

リハビリに関しては、「医師の指示が必要な機能訓練であるリハビリテーション」と「医師の指示が不要な機能訓練」の整理を付け、将来の「リハビリ難民防止」の為に、医師の指示があれば通所リハや訪問リハ以外のリハ職が、リハビリを提供できるシステムづくりを行うべきだと思います。

今までは既存の人材でカバーできていたこともカバーできなくなり、人材不足による影響がさまざまな所で歪を生み出し始めています。

それは想像以上に広く深く進んでいるように感じます。

大きな爆発となって地域の介護崩壊とならないように、知恵を出し合って対策していくことが望まれます。


■第182回社会保障審議会介護給付費分科会

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_13021.html


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