会長:妹尾弘幸の報告
2020年12月2日(水)に「第195回介護給付費分科会」が開催されました。
今回のテーマは下記について主に話し合われました。
【1】感染症や災害への対応力強化
【2】地域包括ケアシステムの推進
【3】自立支援・重度化防止の取組の推進
【4】介護人材の確保・介護現場の革新
【5】制度の安定性・持続可能性の確保
【6】その他
総論
各案件はおおむね了承されましたが、「グループホームの夜勤を3ユニット2名で可とすること」と「ユニット型の定員を10名から15名に増やすこと」については、賛否の意見が拮抗し、次回に持ち越しとなりました。
上記の案件について、厚労省は制度の継続の視点から提案し、特養や老健、医療の各協会団体は、経営者の立場から今の施設の運営継続の視点で賛成の立場をとり、職能団体や労働者団体、利用者・家族の側は過重労働増悪とサービス低下の視点から反対の立場を取ったと感じました。
賛成・反対の意見は、現在の問題解決と将来の問題解決の視点の差にもなります。
私は、現場の一職員として働き、経営者としても仕事をしている立場から、それぞれの立場からの意見はいずれも理解できますが、介護制度が大きな岐路に立たされているという印象も受けました。
尊厳の保持、自立支援を目的として、ある程度理想的な姿を追い求めてきた介護制度が、これまでの考えの延長では成り立たなくなってきたのです。
「介護の効率的運営」は、「一人の職員が多くの利用者を見ることが出来るようになること」のようです。
その点から考えると、ICT・ロボットの活用促進、ユニット定員の増加、夜勤基準の緩和などの提案が出ることは理解できます。
その先は、モニターでの状態把握とコンピューターによる判断、夜間排泄は自動吸引、自動体位変換、全自動風呂、ロボットとの対話…などに進むでしょう。
そこには、利用者本人の覚悟が必要となります。
また、介護保険が目指す「人間の尊厳」、「自立支援」とは何かを改めて考えることも必要です。
制度を崩壊させることなく、生活・人生で自分達が守りたいことは堅持することが必要です。
一つひとつ捨て去った時に残るものは何でしょうか。
介護従事者はそれを支えられるでしょうか。
色々な視座・視点で将来像を考える必要があると感じました。
将来振り返った時に、2021年は大きな変化の起点の年になりそうです。
【1】感染症や災害への対応力強化
(1)日頃からの備えと業務継続に向けた取組の推進
・感染症対策の強化として、以下の取組を義務づける。(※3年の経過措置期間を設ける)
→施設系サービスについて、現行の委員会の開催、指針の整備、研修の実施等に加え、訓練(シミュレーション)の実施
→その他のサービスについて、委員会の開催、指針の整備、研修の実施等、訓練(シミュレーション)の実施
→全てのサービスについて、感染症や災害が発生した場合の業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等を義務づける(※3年の経過措置期間を設ける)。
→通所系・短期入所系・施設系サービス、(地域密着型)特定施設入居者生活介護について、小規模多機能型居宅介護等と同様に、非常災害対策としての訓練の実施に当たって、地域住⺠の参加が得られるよう連携に努めなければならないこととする。
【2】地域包括ケアシステムの推進
(1)認知症への対応力向上に向けた取組の推進
・訪問系、居宅介護支援及び福祉用具貸与(販売)を除く全ての介護サービス事業者について、介護に直接携わる職員のうち、医療・福祉関係の資格を有さない無資格者に認知症介護基礎研修を受講させるために必要な措置を講じることを義務づける。(※3年の経過措置期間を設ける)
(2)医療と介護の連携の推進
・薬剤師の居宅療養管理指導の算定要件とされている介護支援専門員等への情報提供について、明確化する。
・有床診療所から移行して介護医療院を開設する場合は、当該事業者が施設の新築、増築又は全面的な改築の工事を行うまでの間、一般浴槽以外の浴槽の設置は求めないこととする。
(3)在宅サービス、介護保険施設や高齢者住まいの機能・対応強化
・通所介護について、地域密着型通所介護等と同様に、地域住⺠やボランティア団体等との連携及び協⼒を⾏うなどの地域との交流に努めなければならないこととする。
・短期入所、施設系サービスの個室ユニット型施設について、以下の見直しを行う。
→ユニット型指定介護老人福祉施設等における介護・看護職員の平均的な配置を勘案して職員を配置するよう努めることを求めつつ、1ユニットの定員を15人を超えない範囲で緩和する。
→ユニット型個室的多床室について、感染症やプライバシーに配慮し、個室化を進める観点から、新たに設置することを禁止する。
(4)ケアマネジメントの質の向上と公正中立性の確保
・居宅介護支援事業者に、以下について利用者に説明を行うことを新たに求めることとする。
→前6か月間に作成したケアプランにおける各サービスの割合
→前6か月間に作成したケアプランにおける各サービスの、同一事業者によって提供されたものの割合
(5)地域の特性に応じたサービスの確保
・認知症グループホームのユニット数を弾力化するとともに、サテライト型事業所の基準を創設する。
→「原則1又は2、地域の実情により事業所の効率的運営に必要と認められる場合は3」とされているユニット数を「3以下」とする。
→サテライト型事業所の基準について、サテライト型小規模多機能型居宅介護の基準を参考に定める。
・小規模多機能型居宅介護及び看護小規模多機能型居宅介護について、過疎地域等において、地域の実情により事業所の効率的運営に必要であると市町村が認めた場合に、人員・設備基準を満たすことを条件として、登録定員を超過した場合の報酬減算を一定の期間(市町村が認めた時から当該介護保険事業計画期間終了までの最大3年間を基本とし、市町村が認めた場合には延⻑が可能)に限り行わないこととすることを踏まえ、この場合には、登録定員及び利用定員を超えることも可能とする。
・小規模多機能型居宅介護について、厚生労働省令で定める登録定員及び利用定員の基準を、市町村が条例で定める上での「従うべき基準」から「標準基準」に見直す。
・必要な法律上の措置を講じた上で、運営基準について所要の改正を行うもの。
【3】自立支援・重度化防止の取組の推進
(1)リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取組の連携・強化
・施設系サービスについて、口腔衛生管理体制を整備し、入所者の状態に応じた口腔衛生管理を行うことを求める。
栄養士又は管理栄養士の配置を求めるとともに、入所者ごとの状態に応じた栄養管理を計画的に行うことを求める。(※3年の経過措置期間を設ける)
(2)介護サービスの質の評価と科学的介護の取組の推進
・全てのサービスについて、CHASE・VISITを活用した計画の作成や事業所単位でのPDCAサイクルの推進、ケアの質の向上を推奨する。
【4】介護人材の確保・介護現場の革新
(1)介護職員の処遇改善や職場環境の改善に向けた取組の推進
・全ての介護サービス事業者に、適切なハラスメント対策を求めることとする。
(2)テクノロジーの活用や人員基準・運営基準の緩和を通じた業務効率化・業務負担軽減の推進
・運営基準において実施が求められるサービス担当者会議等の各種会議について、以下の見直しを行う。
→利用者等が参加せず、医療・介護の関係者のみで実施するものについて、テレビ電話等を活用しての実施を認める。
→利用者等が参加して実施するものについて、利用者等の同意を得た上で、テレビ電話等を活用しての実施を認める。
・夜間対応型訪問介護について、以下の見直しを行う。
→オペレーターについて、併設施設等の職員や、随時訪問サービスを行う訪問介護員等との兼務を可能とする。
→他の訪問介護事業所、定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所に、事業の一部委託を可能とする。
→複数の事業所間で、随時対応サービス(通報の受付)の集約化を可能とする。
・認知症グループホームの夜間・深夜時間帯の職員体制について、3ユニットの場合、一定の要件の下、夜勤2人以上の配置に緩和することを可能とする。
・小規模多機能型居宅介護について、介護老人福祉施設又は介護老人保健施設と併設する場合において、入所者の処遇や事業所の管理上支障がない場合、管理者・介護職員の兼務を可能とする。
・施設系サービスについて、従来型とユニット型を併設する場合において、入所者の処遇に支障がない場合、介護・看護職員の兼務を可能とする。
・地域密着型特別養護老人ホームの人員配置基準について、以下の見直しを行う。
→サテライト型居住施設において、本体施設が特別養護老人ホーム・地域密着型特別養護老人ホームである場合に、本体施設の生活相談員により当該サテライト型居住施設の入居者の処遇が適切に行われると認められるときは、生活相談員を置かないことを可能とする。
→地域密着型特別養護老人ホーム(サテライト型を除く)において、他の社会福祉施設等との連携を図ることにより当該地域密着型特別養護老人ホームの効果的な運営を期待することができる場合であって、入所者の処遇に支障がないときは、栄養士を置かないことを可能とする。
・短期入所生活介護における看護職員の配置基準について、看護職員を配置しなかった場合であっても、利用者の状態像に応じて必要がある場合には、看護職員を病院、診療所又は訪問看護ステーション等との密接かつ適切な連携により確保することを求めることとする。
・共用型認知症対応型通所介護における管理者の配置基準について、事業所の管理上支障がない場合は、本体施設・事業所の職務とあわせて、共用型認知症対応型通所介護事業所の他の職務に従事することを可能とする。
・認知症グループホームでは、運営推進会議と外部評価の双方で「第三者による評価」が行われているが、自己評価を運営推進会議に報告し、評価を受けた上で公表する仕組みを制度的に位置付け、当該運営推進会議と既存の外部評価による評価のいずれかから「第三者による外部評価」を受けることとする。
・認知症グループホームにおける介護支援専門員である計画作成担当者の配置について、事業所ごとに1名以上の配置に緩和する。
(3)文書負担軽減や手続きの効率化による介護現場の業務負担軽減の推進
・利用者等に対して書面で説明・同意等を行うものや、事業所における諸記録の保存・交付等について、電磁的記録による対応を原則認めることとする。
また、重要事項の掲示について、閲覧可能な形でファイル等で備え置くこと等を可能とする。
【5】制度の安定性・持続可能性の確保
(1)評価の適正化・重点化
・訪問系・通所系サービス、福祉用具貸与(販売)について、事業所と同一の建物に居住する利用者に対してサービス提供を行う場合には、当該建物に居住する利用者以外の者に対してもサービス提供を行うよう努めることとする。
・平成30年度介護報酬改定において導入された生活援助の訪問回数が多い利用者への対応の仕組みの見直しにあわせて、区分支給限度基準額の利用割合が高く、かつ、訪問介護が利用サービスの大部分を占める等のケアプランを作成する居宅介護支援事業者を事業所単位で抽出するなどの点検・検証の仕組みを導入する。
【6】その他
・施設系サービスについて、事故発生の防止のための安全対策の担当者を定めることを義務づける。(※6月の経過措置期間を設ける)
・高齢者虐待防止の推進として、委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者を定めることを義務づける。(※3年の経過措置期間を設ける)
【情報提供元】
■第195回社会保障審議会介護給付費分科会
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15143.html
【制度改正・報酬改定の最新情報を学ぶ】
■介護報酬・介護制度改定への対策とこれからの介護セミナー
https://www.tsuusho.com/junkai