訓練効果に対する視点
脳卒中片麻痺への歩行訓練を行う際の問題点としては、「訓練効果が持続しない」ということが挙げられます。
これに対しては、「本人が歩き方を理解できていない」という視点を持つことで、新たなアプローチが可能となります。
「本人が歩き方を理解できる」ようになるための歩行訓練のポイント
1.体性感覚への注意
大脳皮質における運動制御では、下肢の筋肉へ運動の信号を送る運動野の活動の前に、「今から下肢へ送る運動の信号は、ここの関節と筋肉をこれくらい動かす予定です」といった運動イメージが先行するといわれています。
また、運動イメージの生成には、触圧覚や深部感覚といった体性感覚が関与しているという研究報告もあり、大脳皮質における体性感覚の処理過程においては、「本人がどの体性感覚に注意するか」が影響するといわれています。
つまり、歩行にかかわる下肢の筋活動には、本人の注意による体性感覚の質が影響するということになります。
歩行を含めた立位バランス能力向上のためには、足底の体性感覚へ注意することが有効で、脳卒中片麻痺の方に、足底における感覚トレーニングを行った結果、立位バランスが向上するという報告があります。
本人が正しく体性感覚に注意を向けられるような工夫ができれば、歩行能力の改善効果が持続することにつながります。
2.難易度設定
脳卒中片麻痺における歩行訓練は、麻痺を持った体で新たに歩き方を学習する過程ともいえます。
そのため、改善のために運動課題の難易度設定の重要性を述べている研究もあり、運動学習理論などを考慮し、ご利用者が「いかに学習しやすい工夫ができるか」がセラピストの使命です。
脳卒中片麻痺への歩行訓練は、難易度の低い起立動作から見直すことが有効です。
歩行障害を持つ脳卒中片麻痺の方の多くが、健側優位になるなど、少なからず起立動作に問題があるからです。
しかし、起立動作に問題がありながらも「歩行の問題の方が大きい」ことで、本人もセラピストもそれを問題視していないことが多い傾向にあります。
「訓練効果が持続しない」という問題が起こる場合の多くが、歩行訓練の難易度設定が「難しすぎる」状態になっているともいえます。
そのような場合、歩行よりも難易度の低い起立動作から訓練を行えば、体性感覚への注意が向きやすくなります。
その結果、起立能力に加え、その後の歩行能力の改善にもつながります。
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