通所介護・訪問介護(生活援助)利用の要介護1・2を総合事業へ移行
これは、通所介護と訪問介護の生活援助の利用者を対象として、要介護1・2の軽度者を介護保険から分離し、市町村事業に移行するというものです。
現状では、市町村間で移行先となる総合事業の実施状況にバラツキが大きく、市町村事業への移行よりも、その受け皿である総合事業の整備促進が先であるという意見が根強くあります。
実際に、住民主体サービスなどの多様なサービスが実施されている市町村数は6〜7割にとどまっているのが現状です。
この状況で市町村事業に移行を決めても、受け皿が整っていないことから介護難民が発生するリスクが高くなります。
そのため、総合事業の整備促進策として、今回の介護保険法改正では、通いの場の整備やボランティア確保を交付金の取得要件として、財政インセンティブが強化されます。
軽度者の市町村事業への移行は、この実質的な成果が出た後となるでしょう。
しかし、財務省が強固に主張していることもあって、近い将来には移行が実現する可能性は決して低くはありません。
インセンティブの強化は、市町村事業の促進を強いることが目的
通所介護と訪問介護の生活援助を利用する要介護1・2 の軽度者の総合事業への移行は、特に地方において受け皿となる総合事業の整備が遅れていることが先送りの大きな要因でした。
現状を見ると、平成28 年から総合事業に移行した第1 号事業(旧介護予防訪問介護、旧介護予防通所介護)は、単に移行しただけなので全国の自治体で9 割程度の整備が実現しています。
しかし、通所型サービスA(緩和した基準)、通所型サービスB(住民主体)については全体的に整備が遅れています。
インセンティブを強化し、通いの場などを増やす
介護保険法は地方分権の法律であり、市町村の意向が反映されます。
2018 年度からインセンティブ交付金(保険者機能強化推進交付金)が設けられ、市町村ごとに高齢者の自立支援や介護予防の強化の促進に取り組んでいます。
制度改正に先だって、交付金について来年度予算では倍増の400 億円が計上され、その増額された200 億円の大部分が、通いの場、介護補助者、ボランティアの整備を中心に活用されます。
特に通いの場については、2019年の成長戦略実行計画においては次のように記されています。
介護予防については、サロン(通いの場)に参加した高齢者は、
(1)要介護認定率が半減
(2)認知症発症リスクが3割減
との調査結果がある
<参照:成長戦略実行計画(2019 年)>
また、骨太方針2019 においても次のように記されました。
地域の高齢者が集まり交流する通いの場の拡大・充実、ポイントの活用といった点について、交付金の配分基準のメリハリを強化する
<参照:骨太方針2019>
今回の改正では、総合事業の利用者が要介護認定を受けた後も、希望すれば総合事業の継続利用を可能とする点が盛り込まれます。
また、国がサービス価格の上限を決める現行制度に弾力性を持たせて、市町村が創意工夫できるようにするとしました。
インセンティブの強化とデイサービスとの関係
今後、市町村がインセンティブ交付金を獲得するためには、通いの場、ボランティアの整備を行うことが必要となります。
通いの場、ボランティアというキーワードはすべて、総合事業などの市町村事業の整備に直結する項目です。
この交付金を活用した促進策によって、全国に市町村事業の整備がある程度整った時点で、訪問介護の生活援助、通所介護の要介護1・2の軽度者を市町村事業に移行する議論が本格化するでしょう。
そして、近い将来に移行の可能性が出てきます。
【情報提供元】
■管理者&リーダーVol.53(一部抜粋)
【総合事業ついて学ぶ】