
「個人の問題」にしないための現場マネジメント視点
介護現場において、「分からないことがあっても上司や周囲に確認せず、自己判断で業務を進めてしまい、結果としてトラブルを招くスタッフ」は、決して珍しい存在ではありません。
新人職員に多い課題ではありますが、経験を積んだ中堅職員にも同様の行動が見られることがあります。
ここでは、入社6か月目の2名の職員を事例に、この問題を「性格」や「本人の資質」だけで片づけるのではなく、なぜその行動が起きるのか、管理者はどこに目を向けるべきかを整理します。
性格の異なる2人に共通して起きた問題
大人しい性格のBさんと、活発で自己主張の強いCさん。
2人は性格こそ正反対だが、「業務の進め方が分からなくても、人に聞かず自己判断で進めてしまう」という共通の課題を抱えていました。
主任であるA氏は、「分からないことがあったら、いつでも聞いてほしい」と繰り返し伝えていました。
一時的には改善が見られるものの、しばらくすると再び同じ行動が繰り返されます…。
この状況に対し管理者が「なぜ言っているのに聞かないのか」と感じるのは自然なことです。
しかし、ここで重要なのは言っているのに伝わらない理由を構造的に考える視点です。
なぜ人は「分からないまま進めてしまう」のか
現場でよく見られる誤解の一つに、「聞かない=怠慢」「聞かない=やる気がない」という捉え方をする人がいます。
しかし実際には、本人なりの理由や心理が存在していることが多いです。
代表的なのが、以下の2つのタイプです。
タイプ【1】
「聞くこと自体が苦手」なあきらめタイプ
Bさんのようなタイプは、質問することそのものに強いハードルを感じている。
・どう聞けばよいか分からない
・過去に「そんなことも分からないの?」という反応をされた
・忙しそうな先輩に声をかけづらい
こうした経験が積み重なると、「聞くくらいなら自分でやってしまおう」という選択をするようになります。
このタイプへの対応で注意すべき点は、「質問を促す」だけでは不十分だということです。
「分からなかったら聞いてね」という声かけは、管理者側としては十分配慮しているつもりでも、本人にとっては具体的な行動につながらないことが多く、有効なのは、
・今、どこまで考えている?
・どう進めようと思った?
といった、答えではなく思考の途中を聞く関わりです。
また、質問に対する最初の反応は非常に重要で、言葉にしなくても、表情や間の取り方一つで「もう聞かないでおこう」という判断が下されてしまうことを、管理者は意識しておくべきでしょう。
タイプ【2】
「できるはず」と思い込む自信過剰タイプ
一方、Cさんのようなタイプは、「自分はできる」「このくらいなら問題ない」という自己評価が先行しやすい例です。
途中で違和感があっても、「何とかなるだろう」と判断し、そのまま進めてしまい、結果としてミスやトラブルにつながる…。
このタイプの場合、「聞かなかったこと」を責めても改善は期待できないので、必要なのは、止まるポイントを業務の中に組み込むことです。
例えば、
・業務の途中で必ず一度報告する
・チェック項目を事前に共有しておく
といった仕組みがあるだけで、独断による進行は大きく減少するはずです。
ポイントは、「信用していないから確認する」のではなく、「より正確に進めるため」「判断の質を高めるため」という前向きな理由づけを行うことです。
「苦手だから早く終わらせたい」心理に気づけるか
もう一つ、現場で見落とされがちな要因が「苦手業務の回避」です。
人は誰でも、苦手な作業や負担の大きい工程に直面すると、無意識に早く終わらせようとする。
その結果、確認や相談を省略し、自己判断が増えてしまう…。
管理者が注目すべきサインとしては、
・特定の業務だけ進め方が急に雑になる
・進捗を聞くと曖昧な返答が増える
・「それは自分の仕事ではない」と強調する
といった変化が挙げられます。
この段階で「ちゃんとやって」と指導するだけでは、問題は解消しません。
「どこが一番やりづらい?」と負担部分を言語化してもらうことで、初めて報・連・相が機能し始めます。
問題は「人」ではなく「設計」にある
分からないまま進めてしまう行動は、本人の意識や性格だけの問題ではありません。
相談しなくても業務が進んでしまう仕組み、止まらなくても許容されてしまう現場設計が背景にあることが多いです。
・どこまで自己判断してよいのか
・どの時点で確認が必要なのか
・誰に相談すればよいのか
これらが曖昧なままでは、どれだけ管理者が伝えたいことを「聞いてほしい」と伝えても、行動は変わりません。
求められるのは、個人を変えようとすることではなく、自然と相談が生まれる業務の流れを整えることです。
その積み重ねが、結果として事故やトラブルの予防につながっていきます。
【お役立ち研修】
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