私は、職員数約60名のデイサービスに勤務している管理者です。
最近、パート職員から「同一労働同一賃金だから、私も今後は賞与がもらえるのですか?」と聞かれました。
現在は100名以下の事業所なので対応していませんが、本当に支払う必要があるのでしょうか?
また、同一労働同一賃金に対して何を準備しておけばいいのか教えてください。
【回答】
100人以下の職員がいる法人は2021年より同一労働同一賃金がスタート。
次年度までに不合理な待遇差がないよう準備する。
ご相談者の事業所は100人以下の職員がいる法人ですから、2021年4月より同一労働同一賃金がスタートします。
よって現段階で同一労働同一賃金によってパート職員(以下、非正規職員)に賞与を支払う必要はありません。
ただし次年度までには、「同一労働同一賃金」について職務の内容や責任等を確認するなど、正規職員と非正規職員との間で賃金や福利厚生面で不合理な差別がないような準備が必要です。
では、具体的にどのような準備が必要になるかですが、今回の改正では、「基本給」「賞与」「各種手当」「福利厚生」「教育訓練」については、正規職員と非正規職員の不合理な待遇差を解消するようにしなければなりません。
その解消に向けては、以下の3点の要素を考慮して判断することになります。
(1)「職務の内容(業務の内容、責任の程度)」、「職務の内容・配置の変更の範囲」からみて均等待遇の対象(両者が同じ場合)か、均衡待遇の対象(それ以外の場合)かを判断します。
(2)均等待遇の場合は差別的取扱いの有無を判断。差別的取り扱いは禁止です。
(3)均衡待遇の場合は、個々の待遇ごとに、当該待遇の「性質・目的」に照らして、「職務の内容(業務の内容、責任の程度)」、「職務の内容・配置の変更の範囲」、「その他の事情」の3考慮要素のうち適切と認められるものに基づき判断。その考慮要素の違いからみた不合理な待遇差を禁止しています。
均等待遇とは?
正規職員と非正規職員の待遇について、待遇の性質や目的・趣旨にあたる事情が同一である場合には、同一の取り扱いをすること。
イメージとしては「イコールになっているか」。
均衡待遇とは?
正規職員と非正規職員の待遇について、待遇の性質や目的・趣旨にあたる事情に違いがある場合には、その相違に応じた取り扱いをすること。イメージとしては「バランスが保たれているか」。
均等待遇の例 「通勤手当」
例えば「通勤手当」という手当があります。
この手当に、「自宅から会社までの通勤のために発生する費用に対して支給するもの」という支給理由があるとします。
この場合、正規職員も非正規職員も「仕事をするために通勤している」ため、その費用の目的は同じです。
このような同じ目的である場合は、均等待遇となり差別的取り扱いが禁止されます。
つまり正規職員も非正規職員も同じ基準に基づいて支給しなければなりません。
均衡待遇の例 「役職手当」
例えば「役職手当」という手当があります。
この手当は「主任などの役職に就く者としての責任の重さを評価して支給」と定義してあるとします。
この事業所では「パートが主任以上の役職につくことはない」と規定している場合、同一の仕事をしていたとしても、非正規職員に役職手当が支払われていなくても不合理な差別があるとは言えません。
これを「均衡待遇」と言います。
このように各手当について、正規職員と非正規職員との間に不合理な差別がないかを確認していくことが大切になります。
また、この同一労働同一賃金の重要な義務として、これらの待遇差などについて、非正規職員から説明を求められた場合や契約を取り交わす際には、必ず説明をしなければなりません。
原則として「資料を作成し、口頭で説明」をすることが必要です。
この説明義務を果たすため、しっかりと準備をすることが重要になります。
【情報提供元】
■月刊デイ2020年9月号(一部抜粋)
執筆:志賀 弘幸氏(社会保険労務士法人THINK ACT 代表社員/社会保険労務士)
https://dayshop.biz/products/detail/314