認知症の人は私たちと何が違っていて、何が同じなのかを考えてみましょう。
当然のことですが、私たちと認知症の人の違いは、認知症(疾患)があるかないかだけで、ほかは全部同じです。
要するに、認知症の人を理解しようと思うなら、「認知症(疾患)」と「人」の2つの視点で考えることが大事なのです。
■大脳の働きを見てみよう
まずは、「人」という視点で考えてみましょう。
私たちは普段、頭の中でどのように考え、どのように行動しているのでしょうか。
下図は、側面から見た大脳を表したもので、各部分の名称とその役割を大まかに示しています。
■生活場面での実際の脳の機能を見てみよう
例えば、喉が渇いて「何か飲みたいな」と思ったあなたの目の前に、ペットボトル入りのお茶がありました。
このときあなたは、後頭葉でこれを見て、頭頂葉で認識しようとし、「これは何だろう?」と側頭葉に尋ねます。
「見たことがある」「知っている」(記憶の中にある)からこそ、たとえ「お茶」という文字が見えなくても、それがお茶であることが分かる(認識できる)のです。
しかし、「これはお茶だ」と認識するだけでは不十分です。次に、飲む方法を考えなければなりません。
そこで、前頭葉で「飲む計画を立てよう」とします。
あなたは、「どうやったら飲めるだろう?」と、もう一度側頭葉に尋ねます。
そして、過去に「フタを開けたことがある」からこそ、今回も正しくフタを開けることができるのです。
そこで初めて、「お茶を飲む」という行動を起こすことができます。
ペットボトルのパッケージのどこを探しても、「飲む時はフタを開けてください」とは書いてありません。
それでもみなさんは、当たり前のようにフタを回して開けています。
私たちが何気なく行動していることも、自分の記憶を頼りにしているのです。
「記憶が大事!」ということを覚えておいてください。
■「認知症」は病名ではなく、状態である
続いて「認知症(疾患)」という視点で考えてみましょう。
大事なのは、認知症は病名ではなく、状態を表した言葉であるということです。
病名としては「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」となります。
認知症とは、「脳に起きた変化によって、記憶障害が起こり、日常生活を送ることが困難になっている状態」と言えます。
特にアルツハイマー型認知症は、記憶の障害を主症状とします。
先ほど、私たちの生活には「記憶が大事!」とお伝えしました。
その記憶が障害されてしまうのが、アルツハイマー型認知症なのです。
また、記憶障害・失語・失認・失行・実行機能障害を総称して、認知症の認知機能障害と言います。
認知機能障害とは、認知症になると出現する症状のことで、中核症状と表現されることもあります。
若いときは、たくさんの情報から大切な情報を選んで覚えたり、無駄な情報は覚えないようにすることができます。
ところが年を取ると、情報がつかまえにくくなり、大切なことを覚えるのに時間がかかるようになります。
さらに認知症になると、情報がつかまえられなくなり、大切なことが覚えられなくなります。
そのため、「5分前に聞いたことでも覚えられない」ということも多く、何度も同じことを聞きに来られる人もいるのです。
そして認知症が進行すると、「覚えられない」だけでなく、「覚えたことを忘れてしまう」ようになります。
今まで覚えてきた大事なことをポロポロと忘れていく…それが認知症の特徴です。
ただし、ここで忘れてはいけないのは、「何もかも忘れるわけではない」ということです。
認知症の人に対して、「ぼけたら何も分からなくなるから本人は幸せだ」と考えている時代がありました。
しかし、「何も分からなくなるわけではなく、分かりにくくなるだけ。分かることもたくさんある」ということを忘れないでください。
【情報提供元】
■認知症なるほど事例集(一部抜粋)
https://dayshop.biz/products/detail/52
■渡辺 哲弘氏(株式会社きらめき介護塾 代表取締役/認知症介護指導者)
株式会社きらめき介護塾
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