(1)基準告示第9条に規定する「運営規定」については、(2)に記載された虐待の防止に係る、組織内の体制(責任者の選定、従業者への研修方法や研修計画等)や虐待又は虐待が疑われる事案(以下「虐待等」という。)が発生した場合の対応方法等を指す内容であること。
(2)基準告示第9条第1号から第4号に定める措置は、虐待の防止に関して規定したものである。
虐待は、介護保険法の目的の一つである高齢者の尊厳の保持や、高齢者の人格の尊重に深刻な影響を及ぼす可能性が極めて高く、訪問型サービス事業者等は虐待の防止のために必要な措置を講じなければならない。
虐待を未然に防止するための対策及び発生した場合の対応等については、「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(平成17年法律第124号。以下「高齢者虐待防止法」という。)に規定されているところであり、その実効性を高め、利用者の尊厳の保持・人格の尊重が達成されるよう、次に掲げる観点から事業所における虐待の防止に関する措置を講じるものとする。
・虐待の未然防止
訪問型サービス事業者等は高齢者の尊厳保持・人格尊重に対する配慮を常に心がけながらサービス提供にあたる必要があり、研修等を通じて、従業者にそれらに関する理解を促す必要がある。
同様に、従業者が高齢者虐待防止法等に規定する養介護事業の従業者としての責務・適切な対応等を正しく理解していることも重要である。
・虐待等の早期発見
訪問型サービス事業所等の従業者は、虐待等又はセルフ・ネグレクト等の虐待に準ずる事案を発見しやすい立場にあることから、虐待等を早期に発見できるよう、必要な措置(虐待等に対する相談体制、市町村の通報窓口の周知等)が取られていることが望ましい。
また、利用者及びその家族からの虐待等に係る相談、利用者から市町村への虐待の届出について、適切な対応をすること。
・虐待等への迅速かつ適切な対応
虐待が発生した場合には、速やかに市町村の窓口に通報される必要があり、訪問型サービス事業者等は当該通報の手続が迅速かつ適切に行われ、市町村等が行う虐待等に対する調査等に協力するよう努めることとする。
以上の観点を踏まえ、虐待等の防止・早期発見に加え、虐待等が発生した場合はその再発を確実に防止するために次に掲げる事項を実施するものとする。
なお、当該義務付けの適用に当たっては、3年間の経過措置を設けており、令和6年3月31日までの間は、努力義務とされている。
① 虐待の防止のための対策を検討する委員会(第1号)
「虐待の防止のための対策を検討する委員会」(以下「虐待防止検討委員会」という。)は、虐待等の発生の防止・早期発見に加え、虐待等が発生した場合はその再発を確実に防止するための対策を検討する委員会であり、管理者を含む幅広い職種で構成する。
構成メンバーの責務及び役割分担を明確にするとともに、定期的に開催することが必要である。
また、虐待防止の専門家を委員として積極的に活用することが望ましい。
一方、虐待等の事案については、虐待等に係る諸般の事情が、複雑かつ機微なものであることが想定されるため、その性質上、一概に従業者に共有されるべき情報であるとは限らず、個別の状況に応じて慎重に対応することが重要である。
なお、虐待防止検討委員会は、他の会議体を設置している場合、これと一体的に設置・運営することとして差し支えない。
また、事業所に実施が求められるものであるが、他のサービス事業者との連携等により行うことも差し支えない。
また、虐待防止検討委員会は、テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。
この際、個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を遵守すること。
虐待防止検討委員会は、具体的には、次のような事項について検討することとする。
その際、そこで得た結果(事業所における虐待に対する体制、虐待等の再発防止策等)は、従業者に周知徹底を図る必要がある。
イ:虐待防止検討委員会その他事業所内の組織に関すること
ロ:虐待の防止のための指針の整備に関すること
ハ:虐待の防止のための職員研修の内容に関すること
ニ:虐待等について、従業者が相談・報告できる体制整備に関すること
ホ:従業者が高齢者虐待を把握した場合に、市町村への通報が迅速かつ適切に行われるための方法に関すること
ヘ:虐待等が発生した場合、その発生原因等の分析から得られる再発の確実な防止策に関すること
ト:前号の再発の防止策を講じた際に、その効果についての評価に関すること
② 虐待の防止のための指針(第2号)
訪問型サービス事業者等が整備する「虐待の防止のための指針」には、次のような項目を盛り込むこととする。
イ:事業所における虐待の防止に関する基本的考え方
ロ:虐待防止検討委員会その他事業所内の組織に関する事項
ハ:虐待の防止のための職員研修に関する基本方針
ニ:虐待等が発生した場合の対応方法に関する基本方針
ホ:虐待等が発生した場合の相談・報告体制に関する事項
ヘ:成年後見制度の利用支援に関する事項
ト:虐待等に係る苦情解決方法に関する事項
チ:利用者等に対する当該指針の閲覧に関する事項
リ:その他虐待の防止の推進のために必要な事項
③ 虐待の防止のための従業者に対する研修(第3号)
従業者に対する虐待の防止のための研修の内容としては、虐待等の防止に関する基礎的内容等の適切な知識を普及・啓発するものであるとともに、当該訪問型サービス事業所等における指針に基づき、虐待の防止の徹底を行うものとする。
職員教育を組織的に徹底させていくためには、当該訪問型サービス事業者等が指針に基づいた研修プログラムを作成し、定期的な研修(年1回以上)を実施するとともに、新規採用時には必ず虐待の防止のための研修を実施することが重要である。
また、研修の実施内容についても記録することが必要である。
研修の実施は、事業所内での研修で差し支えない。
④ 虐待の防止に関する措置を適切に実施するための担当者(第4号)
訪問型サービス事業所等における虐待を防止するための体制として、①から③までに掲げる措置を適切に実施するため、専任の担当者を置くことが必要である。
当該担当者としては、虐待防止検討委員会の責任者と同一の従業者が務めることが望ましい。
【情報提供元】
■【指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について】
(介護保険法施行規則第140 条の63の6第1号に規定する厚生労働大臣が定める基準について)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00034.html
【学ぶ】
■生活期リハ施設がすべき2021年介護報酬改定への対応と医療・介護事業における感染症・災害・経済危機などを乗り越えるための組織づくり
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